どこでもドアで作業効率化を提案した話
20代が終わる頃、遠方の現場へ急いで行く必要がありました。
そのとき上司が言いました。
「どこでもドアがあればなぁ。」
私は、
「ほんまやな。」
と思いました。
全国に出張する仕事なので、移動にはかなり時間がかかります。
新幹線。
飛行機。
車。
乗り換え。
移動だけで、かなりの時間を使います。
でも、どこでもドアがあれば、
ガチャ。
現場。
仕事が終わったら、
ガチャ。
家。
これだけです。
めちゃくちゃ楽です。
そこで私は、さらに考えました。
「待てよ。」
交通費もいらんやん。
新幹線代も、
飛行機代も、
高速代もいらない。
さらに、
「ホテルもいらんやん。」
仕事が終わったら、
ガチャ。
家。
シャワーを浴びて、
自分の布団で寝られる。
これはすごい。
でも、さらに考えました。
「いや待てよ。」
搬入も楽になります。
私たちは現場に材料を持っていくとき、搬入しやすいように、材料をバラバラにして持っていく必要があります。
そして現場で組み立てます。
1階ならまだいいんです。
でも、10階まで手上げしたこともあります。
材料を持って、
階段を上がって、
現場まで運ぶ。
これがめちゃくちゃ大変です。
でも、どこでもドアがあれば、
「会社で組み立ててから持っていけばええやん。」
となります。
会社で完成させる。
どこでもドアを開ける。
現場。
そのまま設置。
これなら、
移動日もいらない。
搬入時間も短くなる。
現場で組み立てる時間も減る。
今までより短納期で仕事を納められる。
めちゃくちゃ業務効率が上がるやん。
そう思いました。
そして、さらに考えました。
「これ、今の仕事だけじゃないな。」
完成したものを、
どこでもドアで全国に運べる。
しかも、こっちは、
ドアを開けるだけ。
トラックもいらない。
運転手もいらない。
ガソリンもいらない。
高速代もいらない。
移動時間もない。
「これ……」
運送業やった方がめちゃくちゃ儲かるんちゃうか?
私は本気でそう思いました。
今の仕事を続けながらでも、
どこでもドアを使って運送業をやればいい。
全国どこでも、
ガチャ。
荷物を届ける。
めちゃくちゃ効率がいい。
そこで私は、考えたことを上司に報告しました。
「どこでもドアがあったら、今の仕事もかなり効率化できますよ。」
「移動日もなくせます。」
「交通費もいらないです。」
「ホテルに泊まる必要もないです。」
「搬入も楽になります。」
「材料を現場で組み立てなくても、会社で完成させて、そのまま現場に持っていけます。」
「今より短納期で仕事を納められます。」
そして、
「それとは別に、運送関係の仕事も高い利益率で取れるんとちゃいます?」
と話しました。
私は、
これはええ提案や。
と思っていました。
業務効率化。
コスト削減。
短納期化。
新規事業。
完璧です。
ところが上司は、
少し困ったような顔をして、
「あぁ……」
「そうか……」
と言いました。
それだけでした。
私は、
「……。」
となりました。
今思えば、
上司も困るわ。
こっちは真剣に、
どこでもドアを使った事業計画
を報告しているんです。
そりゃ、
「あぁ……そうか……」
としか言えません。
でも、私は本気でした。
どこでもドアが一枚あれば、
会社の可能性が一気に広がる。
そう思っていました。
ただ、よく考えたら、
もう一つ問題があります。
私は出張先のホテルに泊まるのが、結構好きでした。
仕事が終わって、
知らない街で飯を食べる。
ホテルに戻る。
テレビを見ながらゴロゴロする。
朝になったら、
また仕事に行く。
それも出張の楽しみでした。
どこでもドアがあったら、
仕事が終わった瞬間、
ガチャ。
家です。
便利です。
ものすごく便利です。
でも、
出張が味気なくなるな。
そう思いました。
結局、
「移動時間をなくしたい。」
「交通費も削減したい。」
業務効率を散々考えたくせに、
最後に気になったのは、
「ホテルには泊まりたいな。」
でした。
結局私は、
架空の乗り物や道具を手に入れると、
すぐ仕事に使おうとするみたいです。
でも、
どこでもドアが本当にあったら、
私はたぶん、
運送会社をやります。
ただし、
ホテルには泊まりたいです。
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