「ハイフ」という言葉のなかに、実は2つの施術がある
「ハイフで小顔になった」「ハイフでリフトアップした」という言葉を、美容の話題でよく見かけるようになりました。ただ、この「ハイフ」という言葉、実はエステサロンで受けられるものと、医療機関で受けられるものとでは、扱っている領域がかなり違います。この違いは、意外と知られないまま、一括りに「ハイフ」として語られてしまっていることが多いように感じています。
ハイフは、そもそも何にアプローチしているのか
ハイフは、そもそも何にアプローチしているのか
ハイフは「高密度焦点式超音波」の略で、超音波のエネルギーを一点に集中させることで、熱を生み出す技術です。この熱が働きかける層は、大きく分けて3つあります。皮膚表面から見て一番奥にあるのが、SMAS(スマス)層と呼ばれる筋膜のような層で、皮膚表面からおよそ4.5ミリほどの深さにあるとされています。年齢を重ねるとこの層がゆるみ、肌を支えきれなくなることで、たるみやしわにつながっていくと考えられています。ハイフの熱は、このSMAS層を収縮させることでリフトアップを狙うほか、その上にある脂肪層に作用して脂肪細胞にダメージを与えたり、さらに浅い真皮層でコラーゲンの生成を促したりすることを目的としています。
つまりハイフは、単に肌の表面を温めているのではなく、狙った深さに正確に熱エネルギーを届けることで、複数の層に同時にアプローチしようとする技術だということになります。
SMAS層への熱刺激は、医療行為にあたる
ここで大事なのが、SMAS層に熱エネルギーを与えるという行為そのものが、医療行為として扱われているという点です。皮下組織の深い層に、意図的に熱による変化を起こすことは、皮膚科や美容外科といった医療機関でのみ行うことが認められています。ハイフはもともと、前立腺がんや子宮筋腫の治療といった医療分野で使われてきた技術で、それが美容分野に応用されてきたという経緯があります。
一方で、エステサロンで受けられる「エステハイフ」は、法律上、医療行為にあたる範囲まで踏み込むことができません。そのため、エステハイフの機器は、医療用のハイフと比べて出力が抑えられていたり、SMAS層まで熱が到達しにくいように設計されていたりします。同じ「ハイフ」という名前がついていても、医療ハイフとエステハイフでは、実際にアプローチできる深さや強さが、そもそも制度的に違うのです。
「小顔効果」という言葉の受け取り方
私がこの違いを知って感じたのは、「ハイフで小顔になった」という体感自体は、決して嘘ではないだろうということです。エステハイフであっても、真皮層や、より浅い部分の組織に熱による刺激を与えることで、肌の引き締まりや血流の変化を感じることは十分にありえます。ただ、その体感の理由を「SMAS層から引き締まった」と説明してしまうのは、実際に起きていることとは少しずれてしまう可能性があります。
エステハイフの効果が、医療ハイフに比べて持続期間が短い傾向にあるとされているのも、この出力や到達深度の違いが背景にあると考えると、納得しやすくなります。エステサロンでの施術に効果がないということではなく、医療機関で行う施術とは、そもそも狙っている深さも、法律上できる範囲も違う、ということを分けて理解しておく必要があるのだと思います。
数字で見ると、違いはさらにはっきりする
この違いは、具体的な数字で見てみるとよくわかります。医療ハイフでは、組織を65℃以上まで加熱するような、高い出力の機器が使われるとされています。一方でエステハイフは、医療資格を持たないスタッフでも扱えるように、出力の上限があらかじめ抑えられた機器を使用します。出力が低い分、組織へのダメージも小さく、麻酔なしで受けられることが多いのは、エステハイフの一つのメリットとして語られることがあります。
この出力の差は、そのまま持続期間の差にもつながっています。一般的に、医療ハイフの効果は半年から1年ほど持続し、3か月ほど間隔を空けて施術を受けるペースが目安とされています。これに対してエステハイフは、効果の持続が1〜2か月程度とされ、1か月ほどの間隔で繰り返し受けることが前提になっているケースが多いようです。価格帯にも差があり、医療ハイフは1回あたり3万円から15万円程度と幅がある一方、エステハイフはそれよりリーズナブルな価格設定になっていることがほとんどです。単純に「安いから何度も受けられる」というより、「出力が低いぶん、頻度を増やすことで効果を積み重ねる設計になっている」と捉えたほうが、実態に近いように思います。
安全性という切り口も、忘れずにいたい
もう一つ触れておきたいのが、安全性の面です。ハイフは熱エネルギーを組織に与える施術である以上、適切に扱われなければ肌トラブルにつながる可能性があります。実際に、エステハイフによる火傷や神経の不調といった健康被害が報告され、行政の調査委員会が取り扱いについて検討した経緯もあります。医療機関であれば、万が一のトラブルの際に医師や看護師がその場で対応できますが、医療資格を持たないスタッフが担当するエステサロンでは、対応に限界があることも知っておいたほうがいい点です。
施術を選ぶときに、確認しておきたいこと
こうした違いを踏まえると、施術を受ける前に確認しておきたいポイントも見えてきます。施術者が医師や看護師なのか、それともエステティシャンなのか。麻酔の説明があるかどうか(強い出力の施術では、痛みへの配慮として麻酔が選択肢になることが多いためです)。そして提示されている価格帯が、医療ハイフの相場に近いのか、エステハイフの相場に近いのか。広告の言葉づかいだけで判断せず、こうした具体的な項目を照らし合わせてみることで、自分が受けようとしている施術がどちらの領域のものなのか、判断しやすくなります。
名前が同じでも、中身まで同じとは限らない
「ハイフ」という一つの言葉の中に、医療機関で行われる、SMAS層に届く強い施術と、エステサロンで受けられる、法律の範囲内に出力を抑えた施術という、性質の異なる2つのものが混在しています。広告やSNSの情報だけを見ていると、この違いに気づかないまま、「ハイフ」というカテゴリー全体を一つのものとして受け取ってしまいがちです。
私は、施術を検討するときには、「これはエステハイフなのか、医療ハイフなのか」を、まず自分の中ではっきりさせるようにしています。同じ名前がついているからといって、期待する効果や仕組みまで同じだとは限らない。この当たり前のようで見落としがちな前提を、私はハイフという技術を通して、あらためて実感させられました。
