文章力は大事だけど難しくないー30年使ってきたたった1つの極意
「副業noteで稼ぐのに文章力はいらない」などという、甘い誘い文句が氾濫している。
プロの端くれとして言わせてもらえば、それは嘘だ。野球選手にバットの振り方が不要だと言う人間がどこにいるだろうか。
だが、世間が「文章力」という言葉を、何か高尚な文学的センスや、難解な語彙力のことだと思い込んでいるのだとしたら、そこには誤解がある。
私が文筆の世界で三十年近く生きてきて、今なお大切にしている核は、たった一つ。それは「リズム」だ。
和歌や俳句を詠むとき、私たちは自然とその調べに耳を澄ませる。心地よい調べは、理屈抜きに人の心へ入り込む。書き言葉も同じだ。歌に負けないリズムがある。それさえ掴めば、文章は勝手に弾み出し、読者を最後まで連れて行ってくれる。
そのリズムを掴むための、極めて簡単なコツがある。
書いている最中の文を、NHKのアナウンサーや、ドキュメンタリーのナレーターに脳内で音読させてみるのだ。
そうすると、不思議なほど「書き落とし」が見えてくる。
ここで一息つきたいのに句読点がない。漢字が続きすぎて音が硬い。語尾が重なっていて耳障りだ。ナレーターが滑らかに読めない箇所は、読者の脳もまた、つっかえている。
AIがどれほど進化しても、この「身体的な心地よさ」までは真似できない。AIが出すのは、確率に基づいた「正しいだけの文字列」であって、呼吸を伴う「言葉」ではないからだ。
文章を型に嵌めようとすると、言葉はどんどん硬くなる。
その呪縛から解き放たれる方法は、机に座って唸ることではない。脳内に自分専用のナレーターを招き入れ、その声に耳を傾ける。「プロジェクトX」の田口トモロヲをノーギャラで常駐させてしまおう。
文章力とは、特別な才能ではない。
自分の書いた一行が、どんな音を立てて読者の心に届くのか。その響きを想像する、ちょっとした「お節介」の集積なのである。
