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社会派映画「揺さぶられる正義」に心揺さぶられた夜

少し前の話になるが、街中にクリスマスソングが流れまくっていた頃、冤罪事件に迫ったドキュメンタリー映画「揺さぶられる正義」が都内で上映されると知り、仕事終わりに見に行った。

監督は元弁護士という異色の経歴を持つ関西テレビの報道記者・上田大輔氏。8年間、SBS(揺さぶられっ子症候群)や児童虐待の冤罪事件を取材し続け、ドキュメンタリー番組をいくつも制作してきた人物である。

今回の映画もSBS事件の加害者とされた人とその家族、彼らのために奔走する弁護団、虐待をなくすという「正義」を掲げ証言台に立つ検察側の医師など、様々な立場の人に上田氏がカメラを向け対峙する調査報道型のドキュメンタリーだ。

結論から言うと、めちゃくちゃ良かった。
あまりに良かったので、会う人会う人に薦めまくっている。

▼予告動画


「正義」とは一体誰を守るためのものなのか
そもそも「正義」とは何なのか


ネタバレになるので詳しくは書かないが、個人的に鳥肌が立ったシーンは、冤罪をなくすという「正義」を掲げて何件もの裁判で弁護側の証人になってきたA医師が、別の事案の裁判では検察側の証人として登場したシーン。一審はA医師の証言などから懲役12年の有罪判決となったが、その後の控訴審では一審の判決は「不合理」として逆転無罪が言い渡されている。

A医師はA医師なりの正義感に従って弁護側にも検察側にも立つのだが、観ているこちら側としては「なんでだよ!こないだまで弁護側であんなに熱弁を奮ってたのに!なんでなんだよ、センセェー!」と勝手に裏切られた気持ちになってしまう。上田氏に質された時のA医師の必死な表情も印象的だった。

映画にはもう一人、B医師も出てくるのだが、そちらもまた己の正義を100%「是」として、疑惑の目を向ける者には牙を剥いてくるようなタイプで、強烈なインパクトを残している。

上田氏との1対1のインタビューの中で、医師という神格化されがちな人たちから実に人間的な部分が漏れ出てしまう瞬間を観れるのがこの映画の面白さの一つであり、それを引き出した上田氏の取材力は素晴らしいと思う。

しかし一方で映画の終盤では、加害者とされた人物が関西テレビが放送した自身の逮捕報道について、「不要な映像加工で印象操作した」と上田氏を責めるシーンがある。事件報道の在り方について問うこの場面は、手に汗握るピリピリしたシーンで痺れた。

映画は、各事件について白黒つけようとするものではなく、同じ事案でも立場が変われば「正義」も変わり、どの「正義」をとるかもこれまた判断する人の立場や考え方に左右されるという危うさについて、改めて考えさせられる内容だった。


信じることが先か、疑うことが先か。


映画のキャッチコピーになっている「信じることが先か、疑うことが先か。」という一文。シンプルだけど、深い。

もし自分が検察だったら?
あるいは弁護人だったら?
検死する医師だったら?
取材する記者だったら?
被害者の家族だったら?
加害者の家族だったら?

一度抱いた疑念が途中で覆ることはあるのか?
心から信じていたのに嘘だったと知ったら?
何を信じるのか。誰を信じるのか。

全員と接していた記者の上田氏が一番難しい立場にいて、一番悩んだのではないだろうか… 
普段のニュース取材もしながら、これだけ長期にわたって“冤罪”について取材しドキュメンタリーシリーズを作り続けることは心身ともに相当ハードだったと拝察するが、元弁護士であり、子どもを持つ父親でもある上田氏でなければできなかった取材であり、唯一無二の視点から切り込んだ素晴らしいドキュメンタリーだった。

ただ1点だけ、もう少し深掘りしてほしかったことがある。
前述した「事件報道の在り方」。これについて上田氏の“本当の思い”というものがあまり見えなかった気がした。「偏向報道は良くないこと、変えていかなければいけない」という当たり障りのないメッセージに留まってしまっているような印象を受けた。

次は報道する側に迫るドキュメンタリーも作ってほしい。(「さよならテレビ」のような。)30代で弁護士から記者に転身して、メディアの体質にどっぷりと使っていない上田氏だからこそできるのでは、
と勝手な期待を抱いている。

まだ観たことがないあなたへ


調べてみたら、今週2月13日から兵庫県丹波市で、そして2月20日からは埼玉県さいたま市で上映されるそうだ。
気になった方はぜひ観に行っていただきたい。

▼最新情報は公式HPでご確認を


▼劇場まで行けない方にはこちらの記事を。ものすごく肉厚に書かれていて読み応えがあります!


▼上田氏本人のインタビュー記事


最後に、カンテレさん、
もしご検討いただける余地がございましたら、ぜひこの映画を含むシリーズ全てのBlu-ray化をご検討いただけますと幸いです。
全部買いますので、何卒。

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