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子どもたちのお泊まり会に、「普通」を買いに走る母親。

4月1日から2日にかけて、近所の兄弟が泊まりに来た。

長男と次男ともに同級生で、少年野球もいっしょのゲンちゃんと弟のゴウちゃん(共に仮名)。
雨のそぼ降る午後、2人で傘をさして我が家へやってきた。

やってきた、と言いながら、私はその頃、近所のスーパーで買い物をしていた。その日のおやつと、夜の餃子、翌日の昼のカレーの材料を買いに。

ふと、おやつや食後にフルーツを出したらオシャレな感じしない?と思い立ち、リンゴとオレンジ、バナナもカゴへ入れる。

大きなエコバックを両肩にぶら下げ、そのあとは近くのドラッグストアへ。

我が家にはボディソープというものがない。

無香料の固形石鹸があるだけなのだが、そんなの我が家だけなんじゃないのかという不安がよぎり、「他の家には普通あるだろう」と思われるボディソープを買った。あとは、オーガニックのシャンプーしかなかったので、誰にでもなじみのありそうないい匂いのするシャンプーとトリートメントのセットも。

また、我が家は子ども用歯磨き粉は無添加のモノを使っていたが、だいぶ前に切らしてしまい、我が子たちは何もつけずに歯磨きをするのに慣れていた。しかし、「それって普通じゃないよな」と思い、ブドウ味のキャラクターのイラスト付きの歯磨き粉を購入。

普段、多動で余裕ない&ズボラな生活をしている私は後回し癖がひどく、家じゅうが散らかっている。ゲンちゃんたちにとって、特に未踏である2階のそんな状態を見せたくなくて、2週間ほど前からごみを計画的に出し、お風呂掃除も数日かけて念入りに行った。

ここまで掃除を頑張ったのは、引っ越し以来だったかもしれない。

今まで、私の友人が子連れで泊まりに来てくれたことが数回あったが、まだそこまで散らかりすぎていなかった時代だったのか、あるいは、私の気の置けない友人にそこまで気を張る必要もないと思ったのか、今回ほどのプレッシャーはなかったように思う。

基本的に私は「みんなができていることを私はできない、していない」という自覚が常にうっすらあるのだが、我が家に泊まりに来てくれるほどの仲の友人であれば、このどうしようもない自分を受容してもらえているという甘えが発動し、そこまで頑張らない。

しかし、「子どもの友達」となると、話が違う。
「だらしない母親のせいで子どもが恥をかくのでは」という恐怖心がよぎる。「あの子の家汚いんだよ」なんて噂されたら、大変だ。

何日も前から片づけ、掃除をしないと不安でしょうがない。そして片付けても片付けても終わらず、最終的に、まったく片付けようとしない子どもたちに当日の午前中、ついにわめき散らかし、狂ったように拭き掃除をし、ゲンちゃんとゴウちゃんが来る時間ギリギリにスーパーへ走るという有様。

帰宅し、子どもたちがテレビゲームに夢中になっている間に、まだ掃除を続ける私。ゴウちゃんに「トイレ行っていいですか」と言われてトイレ掃除をしていないことを思い出す。「ちょ、ちょっと待っててね……!」

ゲンちゃんのリクエストでおやつに肉入りのおにぎりを作り、合間に少々仕事をし、その後、餃子の仕込みへ。とにかく夢中である。

子どもたちの明るい乾杯の声が響き、長男、次男同士が順にお風呂に入り、夜更かしし、それぞれ一緒の布団で眠る。満ち足りた彼らの様子に、あぁ頑張った、1日目が終了したと安堵し、私は秒で寝落ちした。

ゲンちゃん兄弟のお父さんは少年野球の監督で、ゲンちゃんは決められたトレーニングメニューを毎日こなす。2日目の帰宅時間は16時厳守。直前になって、まだ帰りたくないというゲンちゃんとゴウちゃんを、子どもたちと一緒に散歩がてら送り、まるで飛行機の距離の友人のように別れを惜しんだ。

静かな我が家に帰宅すると、子どもたちは口々に「楽しかったなぁ」「毎日泊まってほしい」「日常に戻っちゃった」などと言う。
私も妙に寂しくて、早くまた可愛い彼らに泊まりに来てほしいと心から思った。

考えてみれば、ゲンちゃんもゴウちゃんも、心優しくて、純真で、我が家にボディソープがなくったって、気にするような子たちじゃないのにな。私は何をそんなに追い詰められていたのか。

次は夏休みかな。大掃除は相変わらずしているかもしれないが、きっともう「普通」を買いに走ったりはしないだろう。
いや、どうかな。スイカを抱えてドラッグストアを右往左往している気もするな。



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