作家ワールドカップ|毎週ショートショートnote
世界中の"書く人"が集う大会。
だが、出場資格に「小説家」の文字はない。
審査基準は、たった一つ。
「最も、心を動かした一文」
参加者は様々だった。
・遺言状を代筆してきた老人
・取扱説明書ひとすじの技術者
・謝罪文を書き続けた広報担当
・ラブレターを代筆して生計を維持してきた女性
審査員の私ももちろん小説家ではない。
抽選で選ばれ、妻と娘に送られて家を出てきただけのサラリーマンだ。
次々と作品が披露される。
長年、言葉で人を動かしてきた、技巧の粋。
どれも見事だった。
最後に登場したその日本人男性は、一枚の紙を、会場に示した。
遠目に、たどたどしい文字が見て取れる。
「これは、私の作品ではありません。ある女性から託されたものです」
カメラがアップで、その紙をスクリーンに映した。
通訳者の英語の声がかぶる。
会場は静まり返っている。
私は息を飲んだ。
「おとうさん、おしごとがんばってね」
それはむすめのひらがなだった。
田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加します。
今週のお題は「作家ワールドカップ」
