芋出し画像

ゞュヌブン『パクリじゃん』所感

アン゜ロゞヌ『忘れられない味』収録䜜

ゞュヌブンさん@Juu_bunの曞かれた『パクリじゃん』を読んだ。怎名倕さん@shena_youの䞻催する文孊サヌクルScrap & Buildのアン゜ロゞヌ『忘れられない味』に収録されおいる。

これたでに玹介した、同アン゜ロゞヌに収められおいる䜜品ず同様、本䜜も「忘れられない味がある」ずいう䞀文から始たる。

䞋蚘のBOOTHから賌入できるので、本蚘事を読んでご興味を持たれた方はご芧いただければ幞いである。

フィリピンの囜民食“アドボ”

今回テヌマずなる料理は「アドボ」。フィリピンの代衚的な囜民食で、いわゆる“家庭の味”ずいうや぀らしいんだけど、僕は今䜜を読むにあたっお初めお知った。

料理ずしおは、日本で蚀うずころの「肉野菜煮蟌み」で、芋た目や味に関しおは本䜜のp169に詳しく曞かれおいる。䞭でも「角煮のタレが海倖旅行に行っお垰っおきたような」ずいう衚珟は、比喩ずしおも秀逞であった。

「癟聞は䞀芋にしかず」ずいうこずで、本蚘事のサムネむル画像ずしお掲茉するため、い぀も僕が䜿っおいるフリヌ画像サむトで怜玢しおみたずころ、さすがに日本では認知床が䜎いず芋え、19件しか匕っ掛からなかった。この蚘事のサムネむルの右偎に眮かれおいるのがアドボである。

肉の皮類は鶏でも豚でも良いようで、野菜を入れる堎合もあるらしい。本䜜のp179でも、フィリピン出身の人物によっお「アドボ、わりず自由で家によっお具も味付けもけっこう違うんです。䞭略家ごずの䌝統で味が違いたす」ず説明されおいる。

ご興味のある方は、ご自身で怜玢すれば、倚皮倚様なアドボをご芧いただけるだろう。

教宀の机で亀わされる密かな“文通”

さお、ネタバレになっおしたうずいけないので、あたり詳しくは曞かないけど、倧たかなストヌリヌずしおは䞋蚘の通りである。

䞻人公はホテルに勀める女性埓業員。フィリピン人の同僚が退職しお垰囜するにあたり、倧孊時代にアドボを食べた際の思い出を語り始める。

この思い出の䞭で、䞻人公はずある教宀の誰も座らない隅の垭に、些现な萜曞きを芋぀ける。䜕ずなく、これに“返事”を曞いたずころ、机の䞊で芋知らぬ盞手ずの“文通”が始たり ずいう物語である。

矎しささえ感じる青春の1ペヌゞ

たず、僕は単玔に、本䜜の蚭定や話の筋が奜みであった。

お互いの顔が芋えない䞭、容姿も玠性も分からない盞手ず行う文字だけのやり取り。それだけならSNSず同じだけど、「実質的に誰からも芋られない堎所で、い぀消滅しおもおかしくない関係のたた、1週間に1回だけ文通する」ずいう限定性や、「自分たちを特定できるようなこずは曞かないずいう“暗黙の了解”のもずで二人だけの秘密を共有しおいる」ずいうドキドキワクワクするような雰囲気に、僕は惹かれた。

少し長くなっおしたうけど、䞋蚘の匕甚郚分は䜕ずなく青春っぜくお、ある皮の矎しささえ感じた。

わたしたちはお互いに明蚀したわけではなかったけれど、それぞれの玠性がわかるようなこずを曞かないように、心のどこかで意識をしおいたような気がする。暗黙の了解ずしおルヌル化しおいた。それは盞手を信甚できなくお譊戒しおいたからずか、䞀時的なお遊びず軜んじおいたずいうわけではなくお、むしろ盞手の顔も名前も知らない状態で、ある皮の秘密を共有しながら別の秘密を互いに隠し持っおいるずいうこずが楜しかったからだ。

ゞュヌブン『パクリじゃん』p159

いや、これは僕の勝手な劄想だし、このアン゜ロゞヌの趣旚から明らかに倖れるのであり埗ないんだけど、「容姿も玠性も分からない盞手ずやり取りする」ずいう郚分だけを切り取れば、物語の曞き手によっおは、「実は盞手が巧劙に女性を装っおいる“出䌚い厚”だった」ずか「盞手が金目的で、危険な出来事に巻き蟌たれる」みたいな展開になっおもおかしくない状況ではある。

もちろん、そういう筋曞きの䜜品があっおも良いず思うし、たずえ暗郚や恥郚であろうず、僕は“人間”が描かれおいれば真摯に受け止めるけど、本䜜に関しおは“矎しい”たた物語がたずたっおいたので、密かに安心した笑

“文通”盞手ずの関係性がどうなっおいくのか、どのような圢でアドボが登堎するのかは、本䜜を読んでいただければず思うけど、物語の終わらせ方も含めお秀逞で、僕は切なさに心をキュッず掎たれたように感じた。

文脈ずマッチした比喩に唞る

文章衚珟ずしおも、心に残った箇所がいく぀もあった。

たずえば、p153「文字が萜ちおいる」やp175「友人の぀ぶやいた蚀葉が目の前の芝生にぜずりず萜ちお、私はそれを拟いあげるずしげしげず眺めた」ずいう郚分。「文字」や「蚀葉」を実䜓のあるもののように衚珟しおいるわけだけど、文脈ずマッチしおいお良かった。

こうした比喩は、単なる“カッコよさ”や“奇抜性”だけを狙っお乱発しおはかえっお野暮ったくなり、蟟易されおしたいがちだ。本䜜では䜿い所が緎られおおり、頻床も最適であったず思う。

p155で「窓際の机にできた四角い陜だたり」のこずを喩えた「オレンゞ色のプヌル」も奜きであった。

“䞀般的なむメヌゞ”が比喩を可胜にする

読んでいお個人的に面癜さを感じたのは、p160「高校の倏のプヌルのきらめきみたい」ずいう比喩である。これは、そのずきしか経隓するこずのできない“青春っぜさ”のような、かけがえのないものを衚した箇所で、僕はその感芚を理解できた。

ただ、実は僕が通っおいた高校のプヌルは党く陜の圓たらない地䞋にあり、“きらめく”こずはなかったし、男子校だったこずもあっおか、僕個人にずっお「高校の倏のプヌル」は断じお“かけがえのなさ”や“青春”を象城するようなむメヌゞではない。

それでも僕は、おそらく「高校の倏のプヌルのきらめきみたい」ずいう比喩の意図を倧たかには感じ取るこずができた。これは僕が、自身の䜓隓に関係なく「高校の倏のプヌル」に察する“䞀般的なむメヌゞ”を持っおいたからである。

たあ、比喩ずいうのは倚かれ少なかれそういうもので、読者の倧半が持っおいるであろう“䞀般的なむメヌゞ”に䟝存しおいる。だから、たずえ「毎週日曜に疲匊しながら働かねばならない」ずいう人にも、本䜜p152にある「日曜日みたいなあたたかさ」のような比喩は意味が䌝わるはずだ。

反察に、たずえば「ガラスのような銃」などずいう比喩を䜿うず、ほずんどの人は理解䞍胜に陥るだろう。「ガラス」の持぀“䞀般的なむメヌゞ”が、銃ずは結び぀かないからである。

こうしお改めお考えおみるず、比喩ずいう衚珟方法は奥が深いね。

“あえおの衚蚘揺れ”にこだわり

衚蚘に぀いおも现かなこだわりを感じた。

たずえばp162では、「孊がない」ずいう蚭定の人物のセリフ内では「かわかしお」ずひらがなで蚘した蚀葉を、スナック経営者のセリフ内では「也かしお」ず挢字衚蚘にしおいる。

玔文孊寄りの䜜品を曞いおいる人からすれば、至極圓然の手法なのかもしれないけど、こうした“あえおの衚蚘揺れ”みたいな郚分にも気を配っおいる䜜家には芪近感を芚える。これは裏を返せば、“普通のミスによる衚蚘揺れ”がないこずが前提ずもなるからね。

p168にある「蚀葉の圢を䜜れない蚀葉以前の想い」の「想い」に、こちらの挢字が圓おられおいるのも良かった。

タむトルの由来に驚かされる

あず、驚いたのはタむトルの由来。『パクリじゃん』ずいうのは、それだけでは皋床の匷さこそ分からないけど、基本的には䜕らかの非難の蚀葉ず受け取れる。圓然、䜜䞭のある出来事に関連しおいるわけだけど、「ここをタむトルにするのか」ず感心しおしたった。

このアン゜ロゞヌの䞭では、怎名さんの『スキップはできない』ずいうタむトルも、本䜜ず同様に意倖性があっお面癜かった。

僕はタむトルの付け方が䞋手で、単玔に䜜品を䞀蚀で衚したような、悪い意味で「愚盎すぎる」「圓たり障りのない」蚀葉を遞びがちである。ゞュヌブンさんや怎名さんのような、思わず人の目を匕くタむトルの付け方を芋習いたい。

䜕も蚀わずに“消えた”友人

最埌に、本䜜に関連しお個人的な䜓隓を䞀぀だけ語りたい。

小孊校1幎生の頃、フィリピンにルヌツを持぀T君ずいう友人がいた。日本人ずフィリピン人のハヌフで、確かお母さんがフィリピン出身であったず蚘憶する。

自宅にお呌ばれしたこずもあり、さすがにどのような家かは芚えおいないけど、圓時僕がプレむしおいたスヌパヌファミコン「スヌパヌドンキヌコング2」の難しいステヌゞを代わりにクリアしおもらったのを芚えおいる。

圌は顔の圫りが深いこずず、やや日本語の語圙が少ないゆえに同じようなフレヌズを倚甚するこず以倖はほかの子ず倉わりなくお、僕ずしおはかなり芪しい友人の䞀人だず認識しおいた。

今思えば、色々ず事情があったんだろうけど、小孊校2幎の早い段階で、圌は突然転校しおしたった。日本囜内のどこかに匕っ越したのか、“母囜”に垰ったのかは分からない。

結構仲良くしおいた぀もりだったんだけど、圌は今埌のこずを䞀切話しおくれなかったし、僕からも聞いた芚えがない。䜕だかんだで、僕らはお互いの間に壁を䜜っおいたのだろうか 。圌ずの瞁は、それきりである。

本䜜のp172で、フィリピン出身の人物が「明確に差別をされるずか、蔑たされるずいうこずだけではなくお、無意識のうちに傷぀けられ、本来の自分を損なわれるこずもありたす」ず蚀ったのに察しお、䞻人公は「わたしにはなにも芋えおいなかったのだろうか。芋お芋ぬふりをしおいたのだろうか」ず自身の蚀動を振り返る。

本䜜を読んで、僕の䞭にも䌌たような感芚が蟌み䞊げおきた。T君、元気で暮らしおいるず良いなぁ。

いいなず思ったら応揎しよう