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未来のための修理

私には推しがいる。

アイドルでも俳優でもない。
会社の近くにある、小さな靴修理店の職人だ。

足幅が広い私は、昔から靴選びに苦労してきた。

合わなければ買い替えるしかない。
その職人に出会うまで、それが当たり前だと思っていた。

初めて店を訪れた日の衝撃を、今でも鮮明に覚えている。

歩くたびにかかとが浮く白い革靴をなんとか履きたくて、職人の前で歩いてみせた。

「こんな感じでカパカパするんです」

職人は靴を受け取ると、つま先側●●●●に中敷を一枚、すっと入れた。

「これで歩いてみてください」

半信半疑で履いてみると、さっきまで足の中で泳いでいた靴が、吸い付くように馴染んだ。

まるで魔法だ。
その日から、その職人が私の推しになった。

その後も様々な靴を修理してもらったが、ある日、7cmヒールのローファーを持ち込んだときのこと。

踵のゴムの交換をお願いすると、職人はぽつりと言った。

「ヒールを少し削りますか?」

一瞬、心が揺れた。

歩きやすさを取るか。7cmの見栄を取るか。

「いえ、このままで」

結局、私は後者を選んだ。

昼休みの、たった20分。
修理された靴を履いた瞬間、あの日の「魔法」は偶然ではなかったと確信した。あれほど歩きづらかった靴が、嘘のように歩きやすいのだ。

削ったな?!と思った。
素人には分からない、ほんのわずかな調整をしたに違いない。しかも履いている私のシルエットは変わっていないのだから、見栄は守られたのだ。

帰り道、軽やかな足音が、魔法の正体を教えてくれた。

職人の技術とは、靴を直すことではない。
靴と人との間にある違和感を見つけ、消すことだった。

壊れたら買い替える方が早い時代だ。
でもこの靴は、足に悩んできた私がようやく出会えた一足だ。

もし、この店がなくなったら、私の靴は捨てるしかなくなるかもしれない。
いや、消えるのは靴だけではない。直して使い続けるという選択肢そのものが、少しずつ街から消えていく。

私に未来を変えるほどの力はないけれど、好きな技術がなくならないように、また「直してください」と頼むことはできる。

推しがアイドルなら、ペンライトを振る。
私が職人に振るのは、修理の依頼だ。

応援しなければ残らない推しと同じように、
職人の技術も、使われ続けてこそ残る。

靴を直すためのお金は、職人の技術を未来へ残すための小さな投資だ。

今日も私は軽やかに一歩を踏み出せる。
確かな技術が、足元に宿っているのだから。

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のぞみ けぃおす* ほぅ、私にチップを? 奇特な方だ。たいへん奇特だ。

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