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勝手に解決シリーズ:第三話「一人でバーに行く勇気がない」

SNSを見ていると、「一人でバーに行く勇気がありません」という声を意外によく見かける。

今日はこのお悩みを解決していく。

バーと言ってもいろいろなタイプがあるが、おそらく多くの人が想像する「THE Bar」のイメージは、外から中の様子が一切伺えない重い扉があり、そこを開けると薄暗い店内にベストを着たバーテンダーが佇み、背後にはボトルがずらりと並んでいる……そんな空間ではないだろうか。

そう、それを「オーセンティックバー」と呼ぶ。

お酒が好きなら、人生で一度は行ってみてほしい場所だ。

とくに若い子はよく「出会いがない」と嘆くが、実はバーにこそ出会いはある。

こういうと、「そんな不純な目的で来ないでください!」という、ギバちゃんみたいな硬派なバーテンダーが出てきそうだが、バーで飲んでいれば、こんなおばちゃんですら、普通に声をかけられるのだ。

……いや、正確には「かけられていた●●」のだ。

大きな声では言えないが、私は酒癖が悪い。普通に酒に飲まれる。

酒の席というのは、どうしても下ネタが出てきやすい。

私は下ネタに関してはIQ120を持つ天才で、ちーとばかしサービス精神が旺盛なので、カウンターの隣客が下ネタを私にふろうものなら、フェルマーの最終定理で返すくらいの気概がある。

結果、オーセンティックなバーには1ミリもそぐわない、ただの「元気な下ネタ姉さん」と化し、ギバちゃんバーテンダーが「ソイヤッ」と私を店の外へ摘み出す。そんな悲しい出来事があったかもしれない。私が始めた物語ではないのにですよ?

それ以来、私は誓ったのだ。「どこのバーに行っても、絶対に自分から話さない」と。

そうして気配を消してグラスを見つめていると、今度は「すごい硬派な女ギバちゃん」だと思われるのか、逆に老若男女から話しかけられるようになる。

やめいやめい、私に話しかけるでない。
フェルマーの最終定理で返すぞ。

もうこれ以上自分の居場所を狭めたくないから、最近は大人しく自宅で飲むことも増えた。

ね?怖くないでしょ?(何がっ)
……こんな、いつ強制退場をくらってもおかしくない綱渡りをしているやつが楽しんでいるのだから、大丈夫。バーって本当はとても楽しいところよ。

それでも「どう入っていけばええんや!」という迷える子羊たちのために、ここできちんとした流れを伝授したい。

まず、初めてバーに行く時は「週末」を避けること

平日の早い時間帯は比較的ゆったりしている店が多く、バーテンダーも至れり尽くせりで対応してくれる。ただし、事前にGoogleマップでの定休日チェックは必須である。

STEP 1:扉を開ける
意を決して、重い扉を開ける。

STEP 2:こんばんはと言う
入るとそこは薄暗い。臆せずカウンター方面に向かって歩き、バーテンダーと目が合ったら「こんばんは」と挨拶をする。

STEP 3:席を決めてもらう
勝手に座るとリザーブ(予約席)のこともある。バーテンダーが促した席に座るか、分からなければ「この席、いいですか?」と一声かけるのがスマートだ。

STEP 4:おしぼり&メニュー決め
おしぼりを受け取り、手を拭き拭きしながら「メニューはありますか?」と聞く。

……ここだ。一番緊張するのは、きっとここだ。

居酒屋のように「レモンサワー」なんて分かりやすく書いてはいない。見慣れないカクテル名や、呪文のような英語のウイスキー名が連なっているメニュー表を前に、気後れしてしまう人も多いだろう。

大丈夫。飲みたいものが分からない時は、正直にこう言えばいい。
「初めてバーに来たので、どんなものがあるのかよく分からなくて」

これだけで、バーテンダーはあなたを最高の一杯へとナビゲートしてくれる。「さっぱりしたやつ」「甘い」「酸っぱい」という、こちらの抽象的なニュアンスを汲み取り、その場でぴったりのカクテルを仕立ててくれる。それこそが、バーテンダーという職人なのだ。

あと、気になるポイントと言えば「お値段」だろう。
バーでの一杯は、だいたい1,000円から3,000円ほどする。有名ホテルのメインバーともなれば、一杯3,000円クラスは当たり前の世界だ。
しかし、これは単なる液体への対価ではなく、「付加価値」にお金を払っていると思えば決して高くはない。

▼バーの付加価値の話

私にとってバーとは、「自分の気分を具現化できる場所」である。

ふんわりとした言葉で伝えただけなのに、ドンピシャな一杯が目の前に現れる。その瞬間の「あ、これこれ! 私が今、本当に飲みたかったのはこれだ!」という体験にお金を払っているし、それだけの価値がそこにはある。

もちろん、飲んだ瞬間に「……普通すぎるな」と思うことだって、たまにはある。しかし私はカッコつけなので、バーテンダーに向かってこう微笑むのだ。

「ありがとう。これが飲みたかったの」

そう、私にとってバーとは、極上に「カッコつけられる場所」でもある。大人には、そういうごっこ遊びができる聖域が必要なのだ(下ネタで自爆しかけているくせに)。

少しはバーに興味を持っていただけただろうか(誰だよ)。

さあ、今夜の仕事帰りは、近くにあるあの重い扉を開けてみよう。

あなたの曖昧な気分を、鮮やかに具現化してくれる人が、そこで待っているのだから。

うん、これで解決だな。

【追記】
ちなみに、バーには基本的に「レモンサワー」はない。焼酎を置いていない店が多いからだろう。

もし似たようなニュアンスのものを頼みたい時は、「ウォッカリッキー」もしくは「ジンリッキー」をレモンで、と注文するといいらしい。

リッキーとは、スピリッツ(蒸留酒)に柑橘類とソーダを加えて作るカクテルのスタイル。

「リッキー」と聞いて、私の脳内には竹内力しか浮かばない。つまり、バーでレモンサワーが飲みたくなったら、竹内力を思い出して「リッキーをレモンで」と注文すればいい。

……いや、竹内力は思い出さなくてもいい。

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のぞみ けぃおす* ほぅ、私にチップを? 奇特な方だ。たいへん奇特だ。