ブログ100本書いて、当たったのは5〜20本。月$40KのSaaSがAI検索で見直したこと
検索ボリュームの大きいキーワードを選び、記事をたくさん書く。
SEOでは、そんな進め方をイメージする人も多いかもしれません。
しかし、参加型プレゼンテーションツール「Slides With Friends」を運営する2人チームは、少し違うやり方で月$40,000超のMRR(毎月の継続収益)に到達しました。
広告も、営業チームもありません。約100本のブログ記事を書き、そのうち売上の大部分を生んだのは5〜20本ほど。
ところが2026年、AI検索によって成長の柱が揺らぎ始めます。
この事例から見えてくるのは、SEOの成功談だけではありません。検索チャネルが変わるとき、最初に壊れるのは検索順位ではなく、コンバージョンかもしれないという現実です。
🎙️ この記事は、ポッドキャスト「ソロプレナーラボ」のエピソードを記事としてまとめたものです。
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100人規模の会社が崩壊したあとに生まれたプロダクト
Slides With Friendsは、プレゼンテーションに投票、クイズ、ワードクラウド、写真共有などを組み込めるサービスです。
会議やオンライン研修、チームビルディングで、参加者がスマートフォンから回答できます。一方的にスライドを見せるのではなく、参加型の体験を作れるのが特徴です。
共同創業者はセシリア・ラザックさんとメイソン・ヒップさん。現在はご夫婦で、営業担当を置かない2人チームとして事業を運営しています。
ただし、最初から小さな事業を作っていたわけではありません。
以前のスタートアップ「Spotwalk」はペットケア領域で複数都市に展開し、従業員約100人の規模まで成長しました。しかし、コロナ禍で事業は崩壊。Indie Hackersの記事では、その要因としてコミュニケーションの欠如が挙げられています。
その事業の「弔いの鐘」が鳴っている最中に生まれたのが、Slides With Friendsでした。
既存事業のスピードが落ち、時間ができた。そのタイミングで、自分たちの困りごとを解決するツールを作ったのです。
最初の有料顧客が現れたのは、公開から約2か月後。金額は年間アクセスの$48でした。小さな売上ですが、ここから事業が始まりました。
100本の記事を支えたのは「買う気」のあるキーワード
Slides With Friendsの成長の柱は、ボトム・オブ・ファネル、つまり購入に近い層を狙ったコンテンツでした。
たとえば「リモート会議とは」という検索は、情報収集の段階にある人が多いでしょう。一方で「Zoom会議 アイスブレイクツール 無料」のような検索は、すでに具体的な解決策を探しています。
検索数だけで見れば、前者のほうが大きいかもしれません。しかし、後者のほうがプロダクトの利用や登録につながる可能性は高い。
セシリアさんたちは、SEMrushやSemfirst、Surfer SEO、GA4、さらにシークレットモードでの実検索を使い、購買意欲のある検索語を洗い出しました。
そして、100語以上の候補をスプレッドシートにまとめ、「自社プロダクトとの合致度」で評価。評価の高いものから記事にしていきました。
結果として、約100本の記事を公開。そのうち「5〜20本が総成長の大きな部分を作った」といいます。
一見すると、80本以上は無駄だったようにも見えます。でも、当たる記事を事前に完全に見抜くことはできません。重要なのは、最初から検索ボリュームだけで大量生産しなかったことです。
プロダクトとの関係が深いキーワードに絞り、検証を重ねた。その積み重ねが、少数の記事から大きな売上を生みました。
この結果、月間トラフィックは176,000、MRRは$40,000超。年間では約$480,000で、黒字化も達成しています。
AI検索が変えたのは、順位ではなくコンバージョンだった
しかし、2026年8月、セシリアさんは「最近のAI検索の状況の変化が、収益の低下を招いた」と語っています。
GoogleのAIによる要約や、ChatGPTのようなサービスに直接質問すれば、検索結果のページや記事をクリックせずに答えを得られる。これが、SEOを主要な流入チャネルとしてきた事業に影響しました。
ここで厄介なのは、検索順位そのものは保たれていたことです。
順位が落ちたなら、原因は比較的わかりやすい。しかし、順位は変わらないまま、訪問者の質や登録率だけが変わると、SEOのダッシュボードには「問題なし」と表示され続けます。
以前なら、記事を読んでサービスに登録していた人がいた。今はAIが先に答えを返すため、わざわざクリックしてくる人の目的が変わっている。
つまり、見るべき指標はPVや順位だけではありません。
訪問数、新規登録数、登録後にコア機能を使った人数。この3つを並べて、毎週同じ方向に動いているか確認する必要があります。数字の動きがズレた瞬間こそ、チャネルの性質が変わったタイミングかもしれません。
次の一手は「量」から「単価」へ
流入が減ったとき、多くの人はさらにアクセスを増やそうとします。SNSを強化したり、広告を出したり、記事を追加したり。
一方、セシリアさんたちは別の方向へ舵を切っています。
まず、AIを使ってリードをスコアリングする。メールアドレスやオンボーディングの情報、プロダクト内での行動などから、価値の高そうな見込み客を見つけます。
さらに、無料プランでもサービスを深く使っているPQL(プロダクト・クオリファイド・リード)に個別で連絡する。すでに価値を感じているユーザーに、より丁寧に向き合うわけです。
そのうえで、高いLTV(顧客生涯価値)が見込めるICP(理想的な顧客像)に集中し、プロダクトの位置づけも「楽しいおもちゃ」から「業務で使う道具」へ寄せていく。最終的には、初めて営業担当を採用する計画もあります。
このAI活用には、明確な線引きもあります。
「AIにアイデアや戦略を出させないでください。リサーチとタスクの実行に使ってください。そこがAIの輝く場所です」
戦略までAIに任せるのではなく、リードの仕分けや調査、定型作業を任せる。事業の方向性は、自分たちが顧客と向き合いながら決める。この考え方は、個人開発者にも参考になります。
まとめ:今週できる、小さな実践
この事例から学べることは3つあります。
1つ目は、検索ボリュームではなく「自分のプロダクトが答えになっている度合い」でキーワードを選ぶこと。
まず10個の候補をスプレッドシートに並べ、「検索ボリューム」と「プロダクトとの適合度」を5段階で評価してみる。後者で並べ替え、上から1本を書いてみるだけでも十分です。
2つ目は、順位やPVだけでなく、登録後の行動まで追うこと。
訪問数、新規登録数、コア機能の利用者数を並べて、数字のズレを見つけます。
3つ目は、流入量が増えないときに、単価と顧客の質に目を向けること。
無料ユーザーの中で最も使い込んでいる10人を探し、そのうち3人に直接メッセージを送る。これがPQLの最小実践になります。
セシリアさんは、こうも語っています。
「予測はできない。今いる場所から、今起きていることに反応するだけ」
100人規模の会社を失い、2人で月$40,000のMRRを作り、今またAI検索によって前提を変えようとしている。その過程にある言葉だからこそ、重みがあります。
SEOもAI検索も、ずっと同じ形では続きません。だからこそ、順位ではなく顧客の行動を見て、今起きている変化に合わせて次の一手を選びたいところです。

