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二つの太陽が笑い合っている|What Am I Talking About?|ZINE感想文

   コニシ木の子さんとえむのマイトンさんのZINEを読んだ。

一つの言葉の可能性をずっと追いかけてきた人と、京大博士卒の書き手。交わるはずのなかった二人が出会ってしまったことで、人生に変化が訪れた。人は何歳からでも、楽しむことができる。愛おしくて、笑って泣いて──人間らしさが、ぎゅーっと凝縮された一冊。

簡単なあらすじ紹介

   私はときどき、本物の言葉に触れたとき、どうしていいかわからなくなることがある。本物の言葉がなにかなんて説明はできなくて。泣きたくなって、でも、泣くのも違っていて、ただ、その人を、その人の存在を丸ごと抱きしめたくなるような気持ち。

   きっとそれは、その言葉の奥にある時間や生き方に触れてしまうからだと思う。人が何年も考え続けてきたこと。悩んできたこと。迷ってきたこと。その全部が、たった一つの言葉の中に詰まっている。このZINEには、そういう言葉が、たくさんあるのだ。

無価値に価値を付けたい。だって私は生きているから。生きていることに価値があると人が言うならば、それをきちんと証明したい。その葛藤の末に、たどり着いた答えが「なんのはなしですか」になる。

『What Am I Talking About?』より

   私は、この二人のおじさんを知ってしまっている。だから、なおさらどんな気持ちで、このZINEを書いたのか。そんなことを考えては、愛おしくなって、その背景にある時間を思っては、ボロボロと泣く。ZINEでも本でも、良くも悪くも、作品と作者の背景を切り離して読むことができないのだ。

   二十歳のとき。私がコニシさんと出会ったのは、もう六年も前で、そのときからこんな情熱を持っている人だった。そのとき、私はどん底にいて、生きていることが苦しくて、Instagram(読書垢)で良く弱音を吐いていた気がする。苦しかった。とにかく苦しくて、そして、自分が苦しいとき、周りの人がやけに眩しく見えることがある。生きていること自体が奇跡のような精神状態で、そういったことをつぶやいた時、コニシさんは励ましてくれた。そのときの言葉は、覚えていないのだけれども、とにかく救われたのは事実で、私の恩師であって、この人に着いていくとそう決めた。

   あの頃の私は、言葉というものをあまり信じていなかった。綺麗な言葉はたくさんあるのに、それが現実を変えてくれるわけではない。だから、どこかで冷めた目で見ていた気がする。

   それでも、人は誰かの言葉に救われてしまうことがある。不思議だなあと思う。きっと言葉というのは、魔法みたいに人生を変えるものではなくて、でも、暗い場所に小さな灯りを置くくらいのことはできるのかもしれない。

   六年前の私は、その灯りに、たしかに救われていたのだ。それに気づくのは、自分が暗いトンネルを抜けてからなのだけれども。そこから、六年──その言葉は、こんなにも広がってZINEになった。そして、背中を追いかけると決めたことが間違っていなかったのだと思わせてくれた。

   どうしてなのかわからないけれど、コニシさんは、マイトンさんといる時、一層輝いて見える。化学反応が起こったのだ、と思う。ずーっと自分一人で追いかけて来た言葉を、こんなにも楽しそうに書いて遊んでくれる人がいる。

太陽の明るい光は敵をとおざけ、からだを温めてくれる。でも、太陽はまぶし過ぎてそのまま見続けるのは難しい。日常に潜む狂気や違和感に真正面から向き合うことは、時に強く眩しすぎるかもしれない。それならばその横で、右に左に大きく波打ちながら光をかき乱すことで、ちょうどいい明るさになるのではないか。

『What Am I Talking About?』より

   マイトンさんの作品には、こんな言葉がある。私から見たら、二人とも太陽だ。ギラッギラに輝いていて、眩しくて温かい。でもきっと、太陽は一つじゃなくてもいいのだと思う。コニシさんが、周りを照らす太陽なのだとしたら、マイトンさんはきっと、その照らし方を考えてくれる人だと思うから。お互いの光を乱反射させながら、世界をほんのすこしだけ明るくして、その光のなかで、人は笑ったり、考えたり、また言葉を探したりする。

   ZINEの中に登場するおじさんおばさんたちは、私より十年以上長く生きているはずなのに、言葉一つでこんなにも楽しそうに遊んでいる。年齢も、肩書きも、歩いてきた道も違うのに。それでも、人は言葉をきっかけに出会い、笑い合って、何かを作ることができるのだ。

   もし今、苦しくてたまらない人がいるなら、このZINEをそっと手渡したいと思う。人生は思っているより長くて、そして、思っているよりも面白くなるのかもしれないよ、と。言葉を信じていない人にほど、このZINEは効く気がするから。

   『What Am I Talking About?』私には、このタイトルが、『なにを書いても受け止めるよ』にしか見えないのだ。

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