『空軍』ハワード・ホークス~真珠湾攻撃されたアメリカの戦意高揚映画~
1941年12月6日、B-17の9機編隊がハワイに向けての定期飛行に飛び立った。4番機の爆撃機メアリー・アンには操縦士クインキャノン大尉以下8人が乗り込んだ。翌日、彼らは日本による真珠湾攻撃を知る……。ハワイ真珠湾攻撃の1周年にあたる1942年12月7日に公開しようという計画で製作されたアメリカの戦意高揚映画。撮影が延び、1943年2月に公開されたようだが興行的にも大成功したそうだ。1942年モノクロ映画。
真珠湾攻撃をされたアメリカ空軍サイドからの物語であり、「リメンバー・パールハーバー」を人々の胸に刻印するために、この映画を作ることはアメリカ合衆国にとって必要なことだったのだろう。戦争とはそういうものだ。日本はアメリカに大使を派遣している最中での日本軍による奇襲攻撃は、いかに卑怯なものであり騙し討ちだったか。奇襲で数的にも劣勢に追い込まれ、ハワイの基地では多くの被害があり、大切な家族や仲間が死んでいった。フィリピンや太平洋の海上でのアメリカ空軍と日本海軍の戦闘場面も描かれ、空軍の攻撃により日本の艦船は次々と沈められていく。ラストシーンは、いよいよ東京大空襲の総攻撃をかける空軍が描かれ、「戦いはアメリカに平和がもたらされるまで続く」と字幕表示される。
この映画は爆撃機メアリー・アンを主な舞台にしているので、操縦士のほかに砲手、機関士、通信士など8人が乗っていて機内での会話劇が成立する。アメリカ本土を離陸してハワイへ向かう上空で、それぞれの故郷のお国自慢を和気藹々としていたかと思うと、日本の奇襲攻撃の通信を聞いて、機内の空気が一変する。訓練ではないのか?と半信半疑で救命胴衣を付けて、戦争が始まっていく。この爆撃機に乗る8人のメンバーの人間ドラマと結束力を中心に描かれていく。パイロットになれずに空軍を辞めようと思っていた男、ハワイにいた妹が奇襲攻撃で負傷した隊員、息子とマニラの基地で会えると思っていたら戦死の知らせを聞く父、玉砕する可能性のある海軍の兵隊から犬を預かるエピソードなど、隊員たちのいろんな物語を描きながら、戦況を描いていく。乗組員のそれぞれの役割がある爆撃機と一人で追撃する追撃機の操縦の違いで、パイロット同士が言い争いをしたりもする。そして空中での戦闘により、リーダー役の操縦士クインキャノン大尉が撃たれて負傷。隊員たち全員がベッドで見守る中、爆撃機メアリー・アンを離陸させるうわ言を言いながら大尉が死んでいく場面は涙を誘う。そして焼却処分を上官に指示されながらも、隊員たちはメアリー・アンを徹夜で修理し、燃料のバケツリレーまでして、亡くなった大尉とみんなで乗ってきた爆撃機で飛び立とうとする。そして日本軍が侵攻してくる中で、やっとの事で飛び立ったメアリー・アンで太平洋上の日本艦隊を発見。空軍の援軍を待って総攻撃を仕掛けるのだった。
空軍において敵はゼロ戦であり、爆弾を落とす海上の艦船である。敵は見えない。見えない敵のことは考えない。敵は顔の見えないは敵でしかない。地上戦になると人間である敵と向き合うことになる。この映画でもマニラでの地上戦に日本軍の兵士たちが初めて登場して描かれ、最後の爆撃される艦船の日本兵たちも描かれている。現代の戦争は、AIでの自動化・無人化が進んでいる。そこに人を殺すことの痛みや殺されることの恐怖は伴わない。大切な仲間や家族が殺されると、敵への怒りが増幅され、戦争は正義の戦いという物語が強化され、攻撃は正当化されていく。結局は、いつだって人間の想像力が昔も今も試されているのだ。
1942年製作/124分/アメリカ
原題または英題:Air Force
監督:ハワード・ホークス
製作:ハル・B・ウォリス
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ、エルマー・ダイアー、チャールズ・マーシャル
美術:ジョン・ヒューズ
キャスト:ジョン・ガーフィールド、ジョン・リッジリー、ハリー・ケリー・Jr、ギグ・ヤング、アーサー・ケネディ、チャールズ・ドレイク、ジョージ・トビアス、ウォード・ウッド、レイ・モンゴメリー、ジェームズ・ブラウン、スタンリー・リッジス、ウィラード・ロバートソン
