大つごもり(メメント・モリ日記)
一昨日開催された東京大賞典でディクテオンというディスタンクシオンみたいな名前の馬が一等賞だったそうで、黒鹿毛のなかなかきれいなお馬さん、きっと教養のある賢い子であることでしょう。
という、ごくどうでもいいことを呟いている暇がない年末。
呟いとるやないか。
まず昨日、中学生の娘が高熱を出して慌てて市の休日診療所に連れて行くと案の定インフルエンザ(A型)。世の中は今インフルエンザの人々だらけであるね。
するとおそろしい事にその半日後、下の娘も熱が出たり下がったりと大変不穏な兆候を見せ始めたので、今朝、夫とふたりがかりで同じように休日診療所に連れてゆくと、今度はインフルエンザ陰性だった。
しかし、家族の中にインフルエンザ罹患者があり、熱もそこそこ高いため、診察を担当した市の医師会のドクターは予防的にタミフルを処方してくださる。
なにしろ下の娘(8歳)はばりばりの基礎疾患持ちであるので、インフルエンザに罹患すると場合によっては入院騒ぎになる。休日診療所の当番医として診察を担当した医師は、事前に記入した「既往歴」の恐ろしい記述内容を見て「うへえ」と思われたかもしれない。在宅酸素付きの循環器系疾患8歳児である。
しかし、ここでかかりつけの大学病院の救急に行くことにすると、まずは事前に電話で相談しなくてはならず(目的の小児科に繋がるまで悠久の時の流れを感じることができるのです)、やっと現地に赴くと足元がうすら寒い救急外来の待合室で1時間も2時間も待つことになり、やっと呼ばれた診察室にいるのが、小児科医は小児科医なのだけれども、この8歳の疾患の専門医ではない上に、大変お若かったりもするので、互いに
「うーん」
という重い空気に包まれてしまうことが意外にあるのです。そして処方箋を貰って薬を取りに行くのはヤミ薬局みたいな、地下の小部屋である(薬剤部はなにも悪くないのだけれど、慣れていないので大体迷う)。
であるならば、市の休日診療所の当番医、海千山千の往年の『町の小児科医』に診て貰う方が絶対早いし、本人も待ち時間が少ない分楽なのでは。
そんな考えに至った、疾患児の親8年目。ニンゲンは楽な方に流れるものだよ。
そして思った通りのベテラン小児科医は、既往歴盛りだくさんの8歳児に然程慌てなかった。そしてインフルエンザ陽性ではないものの、喉が赤く、家族内にインフルエンザ罹患者があり、かつそれなりに熱が高い8歳のために
「あんまり上品な処方の仕方ではないけど、抗生剤とタミフル、両方出します!」
と予防的にタミフルを、そして現在の喉の腫れの対処のための抗生剤を両方処方してくださったのだった。
エレガントな処方というものがあり、ノット・エレガントな処方というものが世の中にあると知った年の暮れ。
そんな訳で今、我が家には39度のお熱でべろべろになっている可愛そうな中2の娘と、熱が上がったり下がったり、故に寝たり起きたりを一日中繰り返している8歳がいます。
すてきな大晦日。うう。
子どものいる年末というものは往々にしてこのようなもので、仕方がないと言えば仕方がない。日常の諸々への諦観はわたしの得意技である。しかし昨日からアイスノンを冷やしては出し冷やしては出し、ポカリスエットをうどんをそれぞれの部屋に運ぶことのなんと忙しいことよ。
こうしてわたしの2025年は暮れゆく。
さて今年は有難いことに2冊、本が出た。
1冊はエッセイで『今は子育て3時間目』、版元さんはKADOKAWA
もう1冊は児童文学で『あの日、ともに見上げた空』、こちらの版元さんはGakken
本当にとても有難い事で、わたしの人生史上では大変な僥倖であり、お世話になった方々には足を向けて寝られない。そしてお世話になった方が多すぎて、倒立して寝ないといけないのではないのかしらんと思う今日この頃。
特に児童文学の方は小川未明文学賞の大賞を頂いての出版ということで、『黒田季菜子』を世に出してくださって本当にありがとうございましたと、選考委員、実行委員、出版社の方には、大阪から神宗の昆布をお送りしたいような心持でいます。いえ、おりまする。
しかし、そんなわたしには大変良くない性質がある。
本が出た、賞をいただけた、ありがたいなあの次に、いつもこんなことを思ってしまうのです。
「いいや、まだまだ、もっと書けるはず、あたしはこんなもんじゃないはず」
昔からそうなのだけれど、わたしは「これでいい」と得心することができない性格で、負けず嫌いというか、ばかというか、これは謙虚の反対の性格なのだと思う。大みそかの今日も「まだもっと、もっと書けるはず」と思って発熱している娘を隣に、キーボードを相手にもがいている。
得心がない、という業の中にいるのが、物書きという生物なのかもしれない。
種々の事情があって、「もうこれしか自分はできないんだぞ」と、思い定めているとはいえ、随分な仕事だなあと思う。
しかし、あとはもう、ただ書いて死ぬだけなんだぞと思うと、清々しい仕事なのかもれないとも思う。
清々しいということにしておきます。
2025年もあとわずか、こうしてわたしの拙い諸々を読んで頂いた方には本当にありがとうございました。そして来年もまた懲りずに書き続けますので、どうぞよろしくお願いいたします。
とりあえず、娘達の風邪を治します。
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