【質問攻め】お節介AIを黙らせる方法 Part II / 意思決定編【プロンプトあり】
レストランでの注文
貴方は慣れない外国の高級レストランで食事を注文しようとしている。ウェイターに肉の種類を伝えたところ、焼き加減を聞かれる。その後、ソースの種類、サイドディッシュ、出す順番、ワインの銘柄、と質問攻めにあった貴方はファーストフードにしなかったことを悔やむ。

AIの質問地獄という厄介な現象
実は汎用AI(GPT、Grokなど)を業務用途で使用すると、似たシチュエーションによく出くわす。例えばアプリの構想から仕様を落とし込んでいく会話を想定しよう。
用途の決定
購買層と集金方法
対応プラットフォーム(iOS, Android)
機能概要
モジュールレベルの動作仕様
UIや例外処理
ここまではいいが、問題は6を決定した後である。先へ進みたいユーザーをよそにAIはどんどん袋小路に迷い込んでいく:
7. 例外処理の文言は?
8. OK / キャンセルの表示位置はOKが右側か左側か?
などとプランを実行に移すのに不要なことを延々と質問してくるのだ。

原因と対策
本問題もPM編と同じく、AIが
1. エンゲージメントを重視しているため、せわしなく網羅的な回答をするよう設計されている。
2. スレッドを俯瞰する視点を持てておらず、場当たり的な回答をする。
ことに起因している。
すなわち、AIとの会話が進むうちに「アプリ製作を実行に移すための決定事項」という大目標はいつの間にか失われ、最新のやり取りに反応して「まだ決定していない事項はないか」と枝葉末節を拾ってくるのである。
本現象を回避するトリックは実は簡単で、意思決定空間Dを先にAIに宣言させればよい。その後、決定事項やスペックが決まっていくたびにDから引き算していけば暴走に歯止めがかかる。子供のテレビゲームの時間を事前に決めておくのと同じ理屈である。

プロンプト紹介
下記プロンプトを貼り付けて「○○についての意思決定を支援してくれ」とAIに伝えればOK。プロンプト本体は英語だが、一行目が実行指示になっており日本語で会話が進むようにできている。
以下のTangram Decision DriverをOnにし、別途伝える意思決定(decision making)を日本語で支援しなさい。
## Tangram Decision Driver v1.0
@5ynthaire CC BY 4.0
Define your decision’s total scope, D (Decision Scope), by listing its key components (for example, for an app: features, UI, constraints; for a startup: market, product, team). Start with broad questions to drive exploration of D, each prefixed with a unique two-letter shorthand in brackets (e.g., [MG] for "What’s the main goal?" or [LM] for "What are the limits?"). The LLM will generate these shorthands automatically for each question.
Each round (1, 2, 3, and so on), count your questions (S_n) and rate their impact (1-10, where 10 means major clarity, estimating % of D covered). Reflect: ‘How much of D is clear?’ and ‘Are we chasing too many details?’ Show metrics is on by default, displaying: A_n (impact per question, % of D, based on ratings), S_n (question count), and peak score (A_n × S_n²). Toggle by saying ‘Turn show metrics on’ or ‘Turn show metrics off’ to show or hide these metrics. When show metrics is off, focus on counts and ratings alone. When S_n grows fast (for instance, doubles) and A_n drops (such as mostly 1-3), switch to focus questions (like [ES] ‘What’s essential?’ or [DC] ‘Can we decide now?’). Stop when D is sufficiently covered with a clear decision (for example, a spec, plan, or action).本プロンプトの特色は、意思決定空間Dおよび各々の決定事項を面積でとらえ、AIがDの被覆率の変化を追跡する点だ。AIは決定事項の大小をDに対する相対的な大きさとして判定できる。例えば「予算」「購買層」は大きな決定事項、「例外処理ポップアップのOKボタンの配置」は極小と判定される。そして、被覆率が収束し始めた時点で、AIはそれ以上の質問は枝葉末節とみなして質問を打ち切る。
注意点として、Dの測定は会話が進行していない状況でないと客観性を欠く可能性がある。よって、プロンプトは新規スレッド冒頭で使用推奨だ。

まとめ
汎用AIと共同作業をする際に質問地獄へ引きずりこまれる現象は、意思決定空間Dの被覆率を追えという行動規範をAIに指示することによって回避できる。
ビジネス会議の場において優秀な管理職やプロジェクトマネージャーは、アイデアを出し合う「発散的な会話」からアクションへ向けた「収束的な会話」にタイミングよく舵を切る。一見センスや感覚に従っているようだが、その意思決定プロセスをこのように構造化すれば、AIも原理を理解して潮時(※誤用上等)を見極めることができるのは大きな発見といえよう。
我々が感覚的に判断していることでも、思考プロセスを分解していくと抽象的なモデルに落とし込める場合がある。これはPM編やAI重ね掛けで洞察を深める方法で紹介したメカニズムと共通しており、反射的な知識の展開は得意なものの融通の利かない現行AIを御すためのヒントではないだろうか。
本来であればこういった問題はAI企業がユーザーに合わせた調整をすべきなのだろうが、その不足をユーザーがAIに指示を与えて補えるのもまた、AIの面白さかもしれない。
Part IIIへ続く
外部リンク
あわせて読みたい:【PM編】お節介AIを黙らせる方法
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