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透明な優しさ|103.5 誰かの食卓



夕暮れ、知らない街を歩いていた。



窓の向こうに、灯りのついた食卓が見えた。

湯気の立つ鍋。並んだ箸。笑い声。

誰かが、誰かの分を取り分けている。



しばらく、その窓の前で足を止めた。

羨ましかったのは、
たぶん料理ではなかった。

「あなたの分は、ちゃんとここにある。」

そんな気配だった。



いつからだろう。

一人で食べることが、当たり前になっていた。

食卓はいつも、
「今から一人で始める場所」だった。



けれど、ふと思う。

食卓とは本来、

誰かを想う気持ちが残る場所なのかもしれない。

だとしたら、その「誰か」は、

他人でなくてもいいのではないか。



今日から、少しだけ変えてみようと思う。

自分のための箸を、自分で並べること。

誰も取り分けてくれないなら、

自分で自分の分を、ちゃんと用意すること。



窓の向こうの灯りは、

もう見えなくなった。

けれど今夜は、

自分の食卓にも、

ひとつ灯りをともしてみよう。



透明な優しさを、そっと言葉に。
5ppa

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