⛴️新航路『脱炭素』〜造船ニッポンが新たに目指す方向性〜
本記事は、AIを使用して筆者が各種報道・企業公表資料・研究資料を要約・考察しており、数値・事実情報は出典に基づきますが、考察部分は筆者個人の見解であり、投資判断を保証するものではありません。
📌 3行要約
・日本の造船業は「衰退産業」とされたが、その質は維持しており、業界内の統合を機に、その厚みを次のステージへ生かし始めた。
・担い手も規模もまったく異なる2つの脱炭素事業が、同じ「造船ニッポン」の下で並走している。
・造船業への投資は、市場競争力の強化だけでなく、海上輸送を守るという経済安全保障の論理とインド太平洋の海路をめぐる布石である。
⚓️栄光から苦悩の時代へ
戦後の焼け野原から出発した日本の造船業は、1970年代半ばにかけて急速に発展し、世界一の座を築いた。総合重工系の造船会社が、豊富な経営資源を背景に大型タンカーの建造から先行者利益を得た。技術力と生産効率の高さで世界の受注を席巻し、「造船ニッポン」という呼び名は当時の日本の製造業の象徴の一つとなった。
しかし二度のオイルショックによる世界経済の低迷により、拡大しすぎた供給能力と縮小する需要とのギャップが生まれ、造船業は構造不況に陥った。この不況は多くの中小造船会社を倒産や廃業に追い込み、さらにその後の設備削減負担が経営資源の豊富な「大手」にも重くのしかかった。グループ内の結束への拘りが再編をさらに遅らせ、アジア隣国の台頭がこれに拍車をかけた。
🌏韓国・中国の台頭と近年の状況
1980年代以降、韓国では造船業において財閥系企業 (現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業など) が、国を挙げた大型投資で量産体制を築き、1兆円を超える公的金融支援まで実施した。2000年代以降は中国が造船業を国家戦略の中核に位置づけ、国有企業中心で政策決定を迅速に反映できる体制を築き、急速に存在感を増し、2023年には世界の新造船建造量で初めてシェア50%を突破し世界一となった。日本も、高付加価値・高難度船種に活路を求めたが、実現見込みの検証が不十分なまま、難度の高い理想に走り、需要低迷と建造工程の混乱も重なり、大手各社が損失を計上する事態に陥った。
かつて日本の「お家芸」とされたLNG船は、2019年を最後に途絶え、2024年時点の世界シェアは中国約70%、韓国約20%、日本約10%となった。
しかしこの1割を支える現場の力が日本にはまだ残っている。
🧩「すり合わせ」の文化が守った現在地
船は機能と構造が複雑に絡み合う「インテグラル(擦り合わせ)型」の製品であり、よい船を造るには、設計〜現場での緻密な連携・調整能力が必要となる。大手が量的な苦戦を強いられた裏側で、中堅の専業造船会社は造船ニッポン時代に積上げたそのノウハウを維持しつつ、得意分野の船舶建造に特化することで利益を確保した。その結果、日本の造船業は量の勝負で敗れても、多様な船種を高品質に仕上げるという評価を守ることができた。
そして本2026年、その潮目をさらによい方向へ変える一石が投じられる。
🤝今治造船×JMU統合という転換点
2026年1月、今治造船がJMU(ジャパンマリンユナイテッド)を子会社化することを発表した。両社を合わせた国内建造量は5割を超え、経営統合によって独占禁止法の制約が解消、調達コストや開発スピードの面で中国・韓国勢に対抗できる体制が整った。今治造船の檜垣幸人社長は「船体だけ造れれば済む時代ではない。総合力が勝負のカギを握る」と語り、次世代船を作る複合的エンジニアリング力の獲得こそがこの統合の目的であるとしている。
単なる事業拡大ではなく、この統合で生まれた体力を土台に、日本の造船業はこれから新たな技術挑戦に向かっていく。
🔥挑戦①アンモニア燃料船という大仕事
商船三井が進めるインドのグリーンアンモニアの輸送計画に伴い、40,000m3型のアンモニアを燃料としたアンモニア輸送船(AFMGC)が2026年11月には竣工予定である。これは5者コンソーシアムグリーンイノベーション基金プロジェクト(日本郵船・ジャパンエンジンコーポレーション・IHI原動機・日本シップヤード・日本海事協会)の成果であり、国産エンジンを組み合わせ、強い毒性を持つアンモニアの漏洩をゼロに抑える安全設計が開発の核心にある。
ここに含まれる「日本シップヤード」は、今治造船とJMUの合弁設計会社であり、この次世代燃料船の開発母体になっている。
☀️挑戦②ペロブスカイト搭載船という実験
船自体に発電機能を持たせる挑戦も進む。この挑戦はペロブスカイト太陽電池の事業伸展に伴い、大きく飛躍する可能性があるが、実は2008年以降15年以上にわたり技術と経験を引き継いできたものでもある。世界で初めて本格的な太陽光発電搭載船を竣工させたのが日本郵船であり、328枚のパネルで40kW(一般家庭12軒分)を発電し、船内電力の一部を賄った。以来、2012年に160kW級 (商船三井・三菱重工業・パナソニック「EMERALD ACE」)、2016年に約150kW級 (川崎汽船・JMU「DRIVE GREEN HIGHWAY」)の発電力を持つ船舶が運用され、国全体で継続的に実績を積み上げてきた。
そして本2026年には、新日本海フェリー「はまなす」(三菱造船)の甲板へのペロブスカイト太陽電池の搭載計画が進んでいる。(今治造船×JMUとは別文脈)
🇯🇵日本政府の「戦略17分野」
造船は、ペロブスカイトやAI・半導体、量子と同じく政府の示す「戦略投資17分野」に指定されている。しかしその選定理由の芯にあるのは「成長投資」よりも「危機管理投資」であり経済安全保障の側面が強い。海上輸送は日本の輸出入の99.5%を担っており、安全保障面でも重要な位置づけである。インドとの関わりを含め、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想やシーレーンをめぐる競争とも連動している。高市総理は「造船は日本の経済・安全保障を支えるきわめて重要な産業」と明言し、2035年までに建造能力を現在の2倍(1,800万総トン)へ引き上げる目標を示した。
『はまなす』という「次世代船の甲板」の上で「成長を目指すペロブスカイト」がその能力を発揮しようとしているこの構図は、市場獲得をめざす「成長投資」がその成長を支える「基盤」の上にある形であり、日本の戦略投資が目指す形の一つと言える。
📝結論
造船ニッポンは量的敗北を経ても残った財産を活かし「競争から協業へ」の転換点を迎え、アンモニアとペロブスカイトという毛色の異なる2つの脱炭素技術を同時実証している。両者はアプローチも規模もまったく異なるが、脱炭素という日本の命運をかけた二正面作戦を展開している。
欧州の企業もエンジン開発を追い上げており、優位は盤石でないほか、商船三井が発注したアンモニア燃料船の建造先が中国であり、船体建造が中国に流れるという構図を変えるには時間がかかるが、
インドから来る再エネと、日本発の再エネ技術が、造船業という一つの現場で同居する物語を後押しする波が来ることを期待したい。
📔参考文献
・南崎邦夫「日本造船業の盛衰と今後」
・上小城伸幸「日本造船業の構造変化」
・みずほ銀行産業調査部「造船-造船主要国の現状と今後の日本企業の戦略方向性」
・ニュースイッチ(日刊工業新聞社)「中国躍進・粘る韓国...造船シェア争い続く、衰退の日本は?」
・Merkmal「造船力は国力そのもの!」「造船王国『日本』の落日! 」
・東洋経済オンライン「世界の『新造船受注争い』」
・外務省 中手造船会社の特化戦略関連
・日本経済新聞(2025年12月25日)/(2026年1月6日)/(2026年1月15日)
・ダイヤモンド・オンライン(2026年5月)
・株式会社IHI「アンモニアの燃料利用」「アンモニア燃料アンモニア輸送船の建造決定」(2023年12月)
・商船三井 プレスリリース(グリーンアンモニア出資検討、CMBテックとのアンモニア燃料船発注)
・NEDOグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」2025年度WG報告資料
・日本シップヤード株式会社 事業戦略ビジョン
・国土交通省「グリーンイノベーション基金事業『次世代船舶の開発』プロジェクト」
・日本郵船 BVTL Magazine
・海洋政策研究所 Ocean Newsletter
・decarbonation-tech.com「再生可能エネルギー援用船(Ⅲ)」
・乗りものニュース(日本海フェリー「はまなす」)
・内閣官房 日本成長戦略会議「戦略17分野における主要な製品・技術等」/「成長戦略の検討課題」
・内閣総理大臣施政方針演説(2026年2月20日)
・第37回海事立国フォーラム(檜垣幸人会長、2026年3月10日)
・日本経済新聞「社説」(2025年11月7日)
・マネックス証券「需要が増加する造船株4選」
・外務省「FOIP」関連資料

