チキンと炭水化物に溺れた夜
妻も娘もいない夜は、街のネオンが自由に見える。ここ数日そうめんが続いていた。そろそろ違う路線へ乗り換えてみようと思い、晩ご飯を探しに家を出た。
都会で「晩飯どうしよう」と考えるとき、コンビニは駅前の案内所みたいなもので、弁当、麺、パン、惣菜が四方八方から行き先を提示してくる。
最初に入ったのはセブンイレブン。
パン売り場で割引シールが貼られた「ベーグル タルタルソース」を見つけた。揚げ物を挟んでもおいしいらしい。
「そういえば、ファミチキが45%増量中や!」
会計中、レジ横でぬくぬくと出番を待っていた揚げ鳥は、確かに魅力的だった。ただ、今の私には君は小さすぎる。軽〜く一瞥し、そのままファミリーマートのチャイムを鳴らした。
ここが都会の良いところである。セブンイレブンの向かいにファミマがあり、15m先にはローソン。なんなら、マイバスケットも手招きしている。

ファミマでは、目的の45%増量ファミチキがお迎えを待っていた。袋から少し顔を出した姿は、いつものファミチキより明らかにでかい。
五割増しと言わないところに大人の事情を感じるけど、私としては大きければ何でもOK!
ザクッ、じゅわで、白飯かきこめるわい!……ベーグルだけど。

帰りしな、「からあげクン2個増量中」のPOPに釣られ、気づけばローソンのホットスナック売り場前で、口を半開きにしながら立っていた。

「……からあげクン 合体謎味?」
箱の半分が赤、半分が黄色。炎まで描かれている。赤はレッド。黄色はカレー。小学生でもたどり着けそうな推理である。
家へ帰り、まずファミチキをベーグルへ挟んだ。タルタルソースだけでは少々寂しかったし、冷蔵庫にあったピクルスも乗せてみる。


セブンとファミマが口の中で合併するとどうなるか。タルタルとあふれる肉汁が混ざり、ピクルスが油を追いかけてくる。看板の色は違えど、喉を通る頃には手を繋いで歩いていた。
もちろん、これで足りるわけでもなく、「からあげクン 合体謎味」は、どんぶりにすることにした。


一個つまみ、白飯と一緒に口へ入れる。
……ん?にんにくっぽい。
もう一口。
……カレー、どこ?胡椒がおる。
コーラと思って飲んだら、アイスコーヒーだったくらいの残念感。
慌ててスマホを開き、ローソンのホームページを確認すると、正体は「レッド」と「ガーリックペッパー」の合作だった。

スパイシーな黄色い刺激を受け入れる準備を完了していたからか。看板の色は一向に交わらない。喉を通る頃には白飯が取り残され、「え、そっち行くん?」と背中を見送っていた。
そうめんが続いたから「たまには違うものを」と家を出たはずなのに、テーブルには、ベーグルとファミチキ。白飯とからあげクン。
栄養の路線図はほとんど変わってなかった。
どれほど都会を彷徨っても、最後にたどり着く駅は、結局のところチキンと炭水化物らしい。
