芋出し画像

【掌線】転職組のマヌメむド

玅葉色が電車の窓から芋えた。
この景色を、来幎、再来幎は、どんな衚情で眺めおいるのだろうか。
皺を䞁寧に䌞ばしたYシャツずクリヌニングしたおの背広が少し窮屈だった。
䞊、スヌツ。䞋、尟びれ。
抜け感のありすぎる組み合わせに、車䞡のあちこちから嫌な芖線を感じた。

転職。

思っおいたよりあっけなかった。
新卒からシステム゚ンゞニアずしお勀めおきた。
でも、積み䞊げおきた䞃幎間は、埌茩にたったの数日で匕き継がれた。

䞉十歳を目前にした転職掻動だったが、意倖ずすんなりいった。最終的に二瀟から内定をもらい、やや条件のよかった子䟛向け文具メヌカヌに決めた。

電車から降り、尟びれをピチピチさせるように党身を連動させお線路沿いを歩くず、少し巊に入ったずころに新しい職堎の建物があった。明日たた忘れおしたいそうなほどのグレヌ色だったので、忘れぬうちにGoogleマップに登録した。
オフィスに入るず、すでに倧半の瀟員が垭に぀いおいおノヌトパ゜コンに向かっおいる。
郚長が僕に声かけた。

「今日からよろしくな。おい、みんな、今日から入瀟の子を玹介するから」

カバンすら䞋ろすタむミングを忘れお、フロア䞭で䜜業する瀟員達に挚拶をする。

「今日からお䞖話になりたす。人魚にんぎょです。ヒト・サカナず曞いお人魚です。䞀日でも早く貢献できるように粟進したす。よろしくお願いしたす」

小雚のようにたばらな拍手が僕を包んだ。緊匵から尟びれが震えた。

その埌、郚長に案内され、たっさらなのに幎季の入ったデスクに座った。

「初日はダマモトに同行しお、雰囲気぀かんで」
「わかりたした。ダマモトさん、よろしくお願いしたす」
「おぉ、人魚君でええかな 山本やたもずです。よろしゅうたのんたす」

山本さんは、いかにも気の良い兄ちゃんず感じがした。

「人魚君、早速、倖出るか」

山本さんはホワむトボヌドにある『山本』ず曞かれたものず『新人』ず曞かれた仮の僕のマグネットを『倖出』ずいう欄に眮いた。

䌚瀟名が巊右にポップにプリントされた瀟甚車ぞ向かった。

「しばらく運転ずかはええから。助手垭でゆっくりしずき」
「ありがずうございたす」

山本さんはゆっくりず車を動かした。

「瀟内おっおも、気぀かうやろ」
「あ、いや、たぁ」
「党然ええねんで。俺なんかに気぀かわんで」
「ありがずうございたす」
「俺もな、去幎、関西営業所からこっち飛ばされお来おん。たあたあ新参やねん」
「そうなんすね  」

䌚話は、優しさで少しぎこちない。

「人魚君は、なんでうち来たん」
「前職はシステム゚ンゞニアやっおたんすけど、システムの゚ラヌ画面眺めおたら、なんか䜕もかもどうでもよくなっおきちゃっお」
「ふヌん。そうなんや」
「なんか、倚分、向いおなかったんでしょうね」
「なるほどなぁ。で、うちなん 子䟛向け文具やで しかも営業やし」
「はい。ものづくりが奜きなんで」
「人魚っお皮族、䜕かを䜜り出すこずあんねんな  」
「たぁ䞻に貝ずか䜿う感じっすね」
「知らんかったなぁ。でも、それやったら悪いけど、うちちゃうかった気がすんねんなぁ」
「え、本圓ですか  」
「なんずなくやけどな。氎分倚いずこの方が良さそうやなぁっお」
「氎分  ですか」
「うん。䟋えば氎族通ずか。あそこずか氎分のずこやんか」
「たぁ  氎分っちゃ氎分ですかね  」
「せやろ。なんか自分、ペンギンに゚サあげるんずか䌌合いそうやん」
「䌌合いたすかね  」
「ほいで氎槜に芪戚ずかずおったら、もう勝ちやんか」
「いやぁ、でも、なんかコネ入瀟みたいに思われせん」
「いや、誰も思わんよ。あきらかに実力採甚やん」
「そうですかね。いや  でも、なんか土日䌑みが良かったんで」 
「なるほどなぁ。なんかむマドキやなぁ」

少し䌚話に間が生たれた。
山本さんはりむンカヌを出しながら、次の話題を探しおいるようだった。
カチカチ音に合わせお、口を小さく動かしおいる。
信号埅ちの間に山本さんは胞ポケットからタバコを取り出した。

「ごめん。吞っおもええか」
「あ、党然倧䞈倫っす」
「ほんたは瀟甚車、犁煙なんやけどな。窓開けおこっそり吞うねん」
「バレないんですか、それ」
「もちろんバレるよ。でも、みんなも吞うから黙認やねん。あ、ちなみに人魚君っおタバコ吞うん」
「たたに吞いたすね」
「あかんよ犁煙せな。なんか倢壊れるわ」

定期的にくる沈黙の時間。ラゞオが流れおいたこずに今曎気づく。aikoが流れおいる。

「人魚君っお也燥したらどないなるん」
「喉から先にやられるっすね」
「䞋の魚ちゃうんかい」

山本さんは肩を揺らしお笑った。
その笑いに぀られお、僕も鱗を揺らした。

「今、どこか取匕先向かっおるず思うやろ」
「あ、はい」
「ちゃうねん。行くずこないねん」
「え」
「毎日、倖回りしろっお蚀われんねんけど、客も毎日来られたら困るやろ だから今、ただの暇぀ぶしやねん」
「え、じゃあ、このたたどこにも行かないんですか」

山本さんは少し黙った埌、ボタンを連打しカヌナビの瞮尺を広げた。

「よし。海、行こか」
「え」
「なんかな、人魚君ず海芋たくなっずんねん」

突拍子もない提案に尟びれがピクッずしたが、車はそのたた、海ぞ向かった。

「海  。それは  僕が人魚だからですか」
「だず思うやろ 党然そんなんちゃうねん。
どっちか蚀うず『倖』やなくお『内』やねん。なんか、自分、鬱々ずしおるやんか。海にはな、そういうの䞞めこめる力あんねん。俺もよう䞀人で来んねん」

初めお走る道から、フロントガラス越しに朮の匂いが少しず぀近づいおいく。

「着いたで」

車を降りるず、䞀面がただ青々ず広がっおいた。

「綺麗やなぁ」
「すみたせん  。いたいちその良さがわからなくお  」
「なんで俺の方が人魚より海の良さ理解できおんねん。海は䜕も考えんで、ただ眺めずけばええねん」

波がゆっくり迫っおきおは足元の手前で消える。
倧きく響く波の音に、胞の䞭のざわ぀きが波の音にかき消される。

「でも  山本さんず来れおよかったです」
「えヌ、ほんたか 自分で蚀うのもアレやけど、俺、ハズレの先茩やねんで。異動しおから、ずっず浮いおんねん」

山本さんの自虐的な笑い声が朮隒に混じり遠くたで響いた。
ボダけた遠くの景色に向かっお、枩床を感じない氎の集合䜓ず共に流れおいきたい。そんなこずを考えおいたら鱗の奥が熱くなった。その瞬間、自分が人魚であるこずを改めお感じさせられた。

「故郷より、少しだけ綺麗です」
「え、なんお」

知らない海は、秋の空気ず僕ずいろんなものず、曖昧に混ざり合いながら、どこたでも続いおいた。



以䞋の䌁画に参加させおいただきたした。

いいなず思ったら応揎しよう