「焼肉屋は儲かる」は本当か?ラーメン屋から転身してわかった“異常な利益効率”と素人が陥る罠
静岡県三島市で、1日2組限定・カウンター4席のみの完全予約制焼肉店「肉室牛」を営んでいる高田です。 当店ではお一人様14,000円のお任せコースをご提供し、目の前で極上の黒毛和牛を最高の焼き加減で仕上げるスタイルをとっています。
さて、飲食店を志す人や、経営に興味がある人からよく聞かれるテーマがあります。 「ズバリ、焼肉屋は儲かるのか?」
今回は、現役の焼肉店店主としての視点、そしてかつてラーメン店を経営していた頃のリアルな経験も交えながら、この疑問に真っ向からお答えしようと思います。
飲食店トップクラスの「客単価」
結論から言うと、焼肉屋は飲食店の中でもトップクラスに客単価が高い業態です。単価が安いとされる大衆店でも客単価は3,000〜5,000円程度になりますし、高級店になれば10万円を超えることもあります。
ビジネスにおいて、この「高い単価」は非常に有利に働きます。 さらに、焼肉というジャンルは基本的に複数人数での利用が見込め、滞在時間も長くなります。お祝い事や「ごちそう」としての要素が強いため、お客様の財布のひもが自然と緩みがちで、利益率の高いお酒もよく出るのが大きな特徴です。
原価率は高いが「利益効率」が異常に良い
一般的に、飲食店の原価率は30%程度と言われていますが、焼肉屋の原価率は40〜50%くらいになることが多いです。そもそも肉の仕入れ原価が高いからです。 これだけ聞くと「原価が高いなら利益率が悪いじゃないか」と思うかもしれませんが、焼肉屋の最大の強みは「利益効率」にあります。
焼肉は「お客さま自身が調理する(焼く)ことが前提」の業態です。そのため、キッチン側での加工や調理の手間が極端に少なく済みます。 極端な話、切ったお肉をお皿に並べただけで、3,000円のお皿なら1,500円の利益が出ます。それが連続で何個も注文されるわけです。 これは、一杯ずつスープを仕込み、麺を茹でて盛り付けるラーメン屋や、カフェなどの業態では到底考えられない金額と効率の良さです。
コスト事情:初期投資は重いが、ランニングコストに妙味あり
もちろん、いいことばかりではありません。 焼肉屋は他の飲食店よりも初期投資が高くつきがちです。大量の煙を吸うための排煙ダクトやロースター(焼き台)、配管工事、そして換気で空気が逃げてしまう分、それを補う高性能な空調設備が必須になります。
しかし、ランニングコストを見てみると面白いことがわかります。
人件費:調理の手数・手間がかかりにくく、ある程度の事前準備がしやすいため、スタッフの人数は少なめで済みます。
ガス代:ずっと火はつけていますが、火自体は小さいのでそれほど大きな金額にはなりません。私は以前ラーメン屋をやっていた際、小さい店でもガス代が10万円くらいかかっていましたが、焼肉屋を始めた時は「ガス代が圧倒的に安いな」と驚いたほどです。
電気代:ここだけは出費大です。空調が効きにくいため、夏と冬のエアコン代は馬鹿になりません(一年を通してエアコンをつけない時期はほんの少しだけです)。
総合すると、コストはかかり気味なものの、売上と調理の効率を考えれば「それでも十分におつりがくる」優秀な利益構造だと言えます。適切な仕入れ、価格設定、人件費の管理ができれば、儲かる仕組みが非常に作りやすい業態です。
素人が陥る最大の罠「歩留まり」
ここまで読んで「じゃあ塊肉を買ってきて、切って出せばボロ儲けじゃないか」と思った方。世間はそんなに甘くありません。
焼肉屋において、適切に管理すれば肉は案外賞味期限が長く、ロスは出ません。しかし、素人が一番陥るミスがあります。 それは「肉は仕入れたままの値段(重量)では売れない」ということです。
いわゆる「歩留まり」というやつです。魚で考えるとわかりやすいでしょう。 1匹1キロ2,000円で買った魚でも、頭や骨、皮は食べられません。食べられない部分が半分あるとすると、切り身になった時点で「500gで2,000円」の原価になります。 肉も同じで、部位によっては余分な脂や筋などを丁寧に削ぎ落とし、半分近く捨てるところもあります(スーパーの精肉部に就職すれば、最初に教えられる基礎知識です)。塊肉の値段だけを見て「これを切り刻むだけで儲かる」という計算は絶対に成り立ちません。
まとめ:結局、焼肉屋は簡単なのか?
利益構造としては極めて優秀ですが、では簡単に儲かるかと言われれば、そうは言えません。 ズバリ、最大の壁は「集客できるか?」です。
たとえば、集客を目当てに安易に値段を下げてしまえば、これまでお話しした「客単価の高さ」や「利益効率の良さ」という前提がすべて崩れ去ります。
集客の原理原則は「売上=客数×客単価」、そして「利益=売上-経費」です。 この数式をどうデザインしていくか。集客や他店との差別化については、次回また詳しくお話ししましょう。
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