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58.「猟奇的郵便局~ラクシャ・バンダン」ダスティ・シティ・ニューデリー

インドには、『ラクシャ・バンダン』という行事がある。
2026年、8月28日のことだった。
姉妹が兄弟の右手に、『ラキ』と呼ばれる綺麗な赤い紐をブレスレットのように結びつける。
兄弟の健康と幸せを祈って。
兄弟はそのお返しに、姉妹を生涯にわたって守ることを誓い、プレゼントやお菓子などを贈るという。
素敵な習慣だと思った。
かなり「不平等条約」のような気もするが。

日本にいる私の兄妹にもこのラキを送った。
男性だけでなく、女性用のラキも売られていた。
兄には銀に赤い紐のラキ、妹にはエキゾチックな緑の石がついたラキ。
荷物には瑪瑙のコースターも入れた。
あとは郵便局で国際郵便を送るだけ。
楽しみだ。

ラキ
氷と海のような瑪瑙のコースター

郵便局の窓口にいたのは、背の高いインド人のお兄さんだった。
30歳くらいだろうか。
「マム。これじゃ送れません」
「え、なんで?前はコレで送れたのに」
お兄さんは頑なに「ノー」と言った。
差出人の住所は荷物の裏面に貼れという。
なぜか人によって言うことが違う。
私は一枚の紙に差出人と受取人の名前を書いていた。
仕方がないので書き直した。
私の横には、同じく荷物の不備を指摘されたネパール系の女性達が、ビニールテープで荷物をぐるぐる巻きにしていた。
ビニールテープは手でカットできないので、女性達ははさみを占領していた。
お兄さんは差出人を書き直した紙と、私の荷物を受け取った。
紙を箱の上にのせ、ビーッとテープで止めた。
でも、さて困った。
はさみがない。

お兄さんは辺りを見回した。
何度見てもはさみはない。
お兄さんは一瞬いやあ、参ったなあ、という顔をした。
そして次の瞬間、お兄さんは荷物の上にかがみ込むと、ガブッとテープに噛みつき、端を食いちぎった。
ビーッとテープを更に貼り、ガブッ!
もう一度ビビーッとテープを伸ばし、ガブッ!

私は「荷物に噛みつく郵便局員」を生まれて初めて見た。
正確にはテープなわけだが、一見してかなり猟奇的だった。
斬新な光景だった。
ところが、誰も意にも留めていなかった。
「まあ、普通そうするよね」
という周囲のごく自然な反応に、私は余計に驚かされたのだった。
私はお兄さんが噛みついた荷物を見送った。

『ラクシャ・バンダン』のギフト、返品されないといいなあ。

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