【連作短編】【奥義】《04:刀》
【連作短編】【奥義】《04:刀》
三題噺:完成/開始/温泉
「どうだ?」
「ん、いい感じだ。すまんな。助かる」
完成した試合用の刀を振り抜き、答える。
「あぁ、そこは仕事だから。それよりもすまない、二ヶ月かかっちまった。使い手の満足いくものを提供するのが職人ってもんだから。あ、ちなみに、料金は親父さんから貰ってる」
「え?親父が?」
「あぁ。毎度お買上げありがとうございます、ってなもんだ。『注文通りの物』を打てたと思ってるぜ」
ニンマリと笑う親友。俺もつられてニヤリと笑う。
「勝てよ。……というより、死ぬなよ?」
「勝っても大怪我、なんてのも有り得るのが剣術家同士の戦いだからな」
「…………それもあるけど。お前の親父さんは」
「ん?」
「強いぞ」
「ん?なんでそう思うんだ?」
俺のために打った刀をじっと見つめながら。親友は絞り出すかのように言葉を続けた。
「…………なんでもやるのが、剣術家なんだろう?だからさ。……いいか?俺はお前の味方だ。応援してる」
「なんだよ、改まって。ん、まあ、ありがとう」
「ん。頑張れ」
アイコンタクト。こっからは俺が頑張る番だ。
「「時代遅れに」」
お互いの右手の拳をガッとぶつけ合う。
ありがとう。気合いが入った。
さて。んではやりますかな。
おもむろに、スマホをいじる。
「もしもし?親父?……うん。今受け取った。……うん……うん……わかった。じゃ、試合開始ってことで。よろしくお願いします」
電話越しでも頭を下げちまうのがやっぱり日本人なんだな、なんて思ってしまう。
今のやり取りを聞いていた親友はなんとも微妙な顔で俺を見ている。
「ん?どした?」
「いや……すげぇな」
「なにが?」
「いや、もう今この瞬間、試しが始まってるんだろ?」
「うん。そのために電話した。向こうもお前の親父さんから刀受け取ったって言うから」
「あ、いや、そうじゃなくて。『お互い、礼!』みたいなのじゃないんだな、って」
「剣術家同士だぞ?殺し合う為に戦うわけだから。今からやりますねーとはならんのよ」
「こ、怖いな」
「怖いぞ」
「はぁー。聞いてはいたけど、やっぱりすげぇな。要はもうなんでもありってことだな?どうすんの?」
「ふふふ…………1週間、温泉に行く」
「は?!」
「親父の精神を削るのさ」
「…………狂ってんな。いい意味で」
