【序破急】【成就】《急:理由》
【序破急】【成就】《急:理由》
三題噺:アイデア/成就/粒子
「クリスはかなり優秀な生徒でしたよ。……いやあ、怖かったです。先生の僕を抜いちゃうのかと思ってたくらいで」
俺は色々と探し周り、やっとこの目の前でカラカラと笑う『クリスの指輪制作の師匠』を突き止めた。……リーリアさんの家で指輪を見てから、実に一年経っていた。
俺はこの師匠さんを、追い求めていたのだと思う。はは。
「何かクリスから聞いていませんでしたか?」
「んー。来なくなる最後の時に。あまりの熱意に絆されて、うちの秘伝の『煌めきを出す方法』を教えたんですよ。……上手く行ったのかな?と気にはなっていましたが。……あ、そうだ、思い出した。ちょっと待ってくださいね」
そういうと、師匠さんは奥の棚をガサゴソやり始めた。
「あったあった。これ、クリスのアイデアメモですね。かなり初期に、高精度に教えを乞いたいとの事で。イメージの共有のために、僕にも同じものをコピーしてくれてたんですよ。……これ、クリスに返しておいてくれませんか?」
「あ、はい。わかりました」
大ヒントの手帳(紙の束)を手に入れた。
ホテルに戻る。逸る気持ちをどうにか抑えながら。一枚、一枚、ページをめくる。
明確なイメージのイラスト。細部にわたる書き込み。詩。彼女への思い。……見つけた!この指輪だ。矢印がしてある。
『この部分に欲しい。強い煌めき』
…………思い出す、あの時の指輪を。……完璧だ。
このイメージイラストと、全く同じ。
スゴいな。やり遂げたんだ、クリスは。
彼女への大切な指輪を。いや。違うな。こだわり抜いた指輪を完成させたい、その思いを成し遂げたんだ。真剣に打ち込んだ、指輪作りを成就したんだ。
…………え?
俺の指先が。サラサラと、粒子のように。
風に流されるように。消えていく。
ああ……そういう事か。
俺は、追いかけていた謎を。解いてしまった。
真剣に打ち込んだものが成就する。
コレが……。
ホテルには、服だけが。
