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FM補完中継局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

FM補完中継局(エフエムほかんちゅうけいきょく)とは、日本において、超短波放送(FM放送)用周波数の90.1MHz(メガヘルツ)から98.9MHzまで[注釈 1]を用いて、中波放送(AM放送)の放送区域における、同放送の補完的な放送「FM補完放送(エフエムほかんほうそう)」を行う中継局である。1990年代に難聴取対策や災害対策として検討が開始され、2014年から本格的に実施されている。

本項目では、FM補完中継局およびFM補完放送についてあわせて記述する。

定義

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「補完中継局」は、総務省告示基幹放送用周波数使用計画第1総則 第5項[1]に「中波放送を行う基幹放送局の放送区域において災害対策等のため補完的に超短波放送用周波数を用いて放送を行う中継局」と定義している。

「補完放送」は、総務省令電波法施行規則第2条第1項第28号の9[2]に次に掲げるものを定義している。

(1) 超短波放送であつて、主音声(超短波放送又はテレビジヨン放送において送られる主たる音声その他の音響をいう。以下この号において同じ。)に伴う音声その他の音響を送るもの、又は主音声に併せて文字、図形その他の影像若しくは信号を送るもの
(2) テレビジヨン放送であつて、静止し、若しくは移動する事物の瞬間的影像に伴う音声その他の音響(主音声を除く。)を送るもの、又は静止し、若しくは移動する事物の瞬間的影像に併せて文字、図形その他の影像(音声その他の音響を伴うものを含む。)若しくは信号を送るもの
引用の促音、拗音の表記は原文ママ

基幹放送の区分を規定する放送法施行規則別表第5号には定義されていない。本項目で述べる「FM補完放送」は上記の(1)が相当する。

前史

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FM放送波をAM放送の難聴取対策に使用したのは、1990年7月に放送用周波数使用計画(現:基幹放送用周波数使用計画)に中波放送の外国波による混信対策が追加されて以降で、最初に開設されたのは富山県・北日本放送の新川FM中継局で1991年9月26日に開局[3]した。その後、日本放送協会(NHK)が1991年11月2日に沖縄県・西表島の祖納にNHKラジオ第1の中継局を開局した。

その後も21世紀初頭にかけて、沖縄県ではラジオ沖縄が2001年4月1日に[注釈 2]、琉球放送が2001年4月1日[注釈 3]と2004年4月1日[注釈 4]に、さらにNHK沖縄放送局は2003年10月24日[注釈 5]と2007年4月1日[注釈 6]にそれぞれ離島の混信対策のためにFM中継局を開局している。

災害対策としては、2004年の新潟県中越地震でNHK新潟放送局の赤塚放送所に併設した中継局[4](NHK新潟放送局#平成16年新潟県中越地震発生後の主な対応も参照)、2011年の東日本大震災で岩手県のIBC岩手放送がテレビジョン放送の山田中継局に併設した臨時中継局[5][6][7]がある。

後に民間地上基幹放送事業者(民放)の周波数は、基幹放送用周波数使用計画に規定[8]された。

概要

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2013年7月、総務省の「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」が中間とりまとめを公表[9]し、「AMラジオ放送によるFM波の利用促進(難聴対策、災害対策)、地上デジタルテレビ放送への移行により空いたV-Low帯域(アナログテレビの1 - 3chがあった帯域)の新たな活用(AMラジオ事業者等による難聴対策等としてのFM波利用)」などを骨子とする災害対策・難聴対策としての送信ネットワークの強靭化が提言された[10]。

総務省はこれを踏まえ、同年9月に「V-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針」を公表[11][12]した。この方針にAM放送の補完放送をFM放送により行うことができるとされた。

2014年1月に総務省は「AMラジオ放送を補完するFM中継局に関する制度整備の基本的方針」を公表[13][14]した。

この基本的方針では、補完放送を行う中継局を「FM補完局」と呼び、その開設目的は「都市型難聴対策」「外国波混信対策」「地理的・地形的難聴対策」「災害対策」とされた。また、AM放送の「親局」を補完する「親局の主たる補完中継局」と「中継局」を補完する「その他の補完中継局」に分けられ、民放の親局に対応するFM補完局については放送対象地域ごとに1つの周波数を確保する(「基幹放送用周波数使用計画」で公示する)もの、中継局に対応する「その他の補完中継局」については目的ごとに使用周波数を割り当てるものとされた。

「その他の補完中継局」の周波数帯
目的周波数(MHz)
76.1 - 90.090.1 - 98.9
都市型難聴対策 -○
外国波混信対策 ○
地理的・地形的難聴対策
災害対策 △
[注釈 7]

主たる親局の補完中継局の免許申請については告示に公示された期間内にするものとされた。空中線電力(送信出力)については「補完中継局の送信場所の属する都道府県を放送対象地域とする超短波放送を行う他の基幹放送事業者の基幹放送局の親局に使用させることのできる空中線電力(送信出力)の値を超えてはならない。」と定義されている為、基本的に同一放送対象地域のFM放送事業者の親局のそれ以下であることとされた。

NHKについては親局の主たる補完中継局の設置は認められないが、その他の補完中継局については民放と同様に設置が認められる[15]。NHK高知放送局ではAM親局(新木ラジオ放送局)を補完する「柏尾山中継局」の設置が認められているが、既存FM局(NHK-FM、エフエム高知)の高知親局や高知放送(RKC)の高知FM補完中継局の送信出力が500W(ワット)であるのに対し、「柏尾山FM補完中継局」は100Wに留められている[16][17]。

AM放送と同時放送をすることから扱いは「独自放送を行わないAM中継局」と同様であるためコールサインは基本的に指定されない。南海放送では2018年3月11日に行われた実験的なAM・FMで別内容の放送のために短期間JOAF-FMのコールサインが与えられていた[18][19]。

周波数帯の拡充

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補完中継局の周波数は基本的に90.1MHzから94.9MHzであるが、今後コミュニティFMの増加やAM放送局のFM転換などにより、逼迫が予想されるとして、日本民間放送連盟(民放連)加盟各社とNHKは過去にマルチメディア放送が使用していて現在は空き帯域となっている95.0MHzから108.0MHzまでの拡充を求めており[20]、2025年5月には枠自体は98.9 MHzまで拡大された。国土交通省も将来的にカーラジオにAM放送の受信機能が搭載されなくなる可能性を踏まえ、現在高速道路会社や各都道府県警察が行っている路側放送のFM転換割当を要望している[21]。

また、2011年7月(東北地方一部は東日本大震災のため2012年3月)まで、地上アナログテレビジョン放送に90 - 108MHzの領域が使用された事情から、地上アナログテレビ放送1chを使用する地域[注釈 10]では電波干渉の問題で原則として86 - 90MHzのFMラジオ放送での使用が認められていなかったが、地上アナログテレビ放送の終了により、一部の放送局ではその周波数の使用が認められた。

FM補完中継局の親局化構想

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総務省の有識者会議は民放AMラジオ局のAM放送廃止とFM放送への転換を容認する方針を示した[24]。ラジオ局の経営悪化を理由に日本民間放送連盟(民放連)が設備・運営コストの安いFMへの一本化に向け制度改正を要望していた。総務省は今後、FM転換・併用をラジオ局の選択に委ねる方向で具体的な検討を進め、2024年2月からFM中継局整備済の一部地域でAM中継局停波の実証実験を始めている。

聴取方法

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茨城放送のFM補完中継局94.6MHzを受信中の状態

原理的にはFM放送が受信できるラジオで聴取できるが、周波数は基本的に90.1MHzから94.9MHzを割り当てるため、ラジオによって聴取可否が異なる。対応するラジオは、2006年から2014年の国内出荷台数約2,200万台の約半数、2006年から2015年の輸入台数約1億2,680万台の約半数以上が聴取可能と推測されており、2015年度以降の国内出荷分についてはほとんどが聴取可能である[25]。FM放送を開始している放送局では「ワイドFM対応型のラジオ」を通信販売[26]したり、ノベルティグッズとしてプレゼントするなどの例も見られる。

ラジオの受信可能周波数帯と90.1 - 94.9・98.9MHzのFM補完中継局の聴取可否
ラジオの受信可能周波数帯
(76.0MHzから)
放送側の周波数

聴取可否

備考
94.9MHzまで 98.9MHzまで
90.0MHzまで×
(例外あり)
元来の日本のFMバンドに合わせたもので、主にFM放送初期の1960年代からアナログテレビ終了前後の2010年代前半に発売したラジオと2014年以前に製造されたカーオーディオやカーナビゲーションなどが該当し、聴取不可能である。

周波数が90.0MHzをわずかに超える場合は、PLLシンセサイザ(電子チューナー)ではないアナログチューニングのラジオであれば、受信周波数範囲のマージンで受信できることもあり、90.2MHzの免許を受けた北日本放送では、「手動で周波数を合わせるアナログダイヤル式のラジオはほとんどのタイプで聞くことができる」[27]「多くの日本向けラジオのFM帯域上限ギリギリの「遊び」の部分で、電波をキャッチする事が出来るはず」[28]と告知した。

95.0MHzまで○ ✕ FM補完放送の開始に伴う日本のFMバンドの拡張を受けて発売されたもので、FM補完放送対応を表明しているラジオのうち、ソニー[注釈 11]、チボリオーディオ[29]、オリンパス[注釈 12]、ELPA製の一部機種やJVCケンウッド製の全機種等が該当。
99.0MHzまで ○ 一部のメーカー(パイオニア[31]など)では、2025年5月までは「ガードバンド」であった99.0MHzまでカバーするものがある。
108.0MHzまで FM補完放送対応を表明しているラジオのうち、ソニー製の一部機種[注釈 11]とパナソニック製や東芝エルイートレーディング(TLET)[注釈 13]製等の全機種や、かつて1980年代以降に製造された「ワールドバンドチューナー対応」等といった日本国外(特に欧米)のFMバンドに対応するいわゆるBCL向けラジオ[注釈 14]や、アナログテレビの1chから3chの音声が受信できるものとして発売されていたラジオ[注釈 15]、この周波数範囲のワイドFMモード[注釈 16]を含むいわゆる「広帯域受信機」と呼ばれる受信機[34][35]が該当。

ニッポン放送が「既に聴取できるラジオは数多く存在する」としているのはこのパターン。

愛称

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2015年3月30日、FM補完放送により親しんでもらうためとして、東京の民放AMラジオ局3社が「ワイドFM」と言う愛称を制定し[36]、大阪の民放AMラジオ3社も「まいど!ワイドFM」というキャッチコピーでPR展開を行う[37]。他の放送局やラジオ受信機メーカー、販売店でもこの愛称を用いてアピールしている。

無線の世界では、周波数変調(FM変調)で通信・放送を行う際に、電波の占有周波数帯幅(周波数偏移)の広さを区別する言葉としてナローFM(略称 NFM、15kHz)・ワイドFM(略称 WFM、200kHz)という言葉が使われており、FMラジオ放送の場合はワイドFMが採用されているが、これとは関係ない。

「ワイドFM」とは別に、各局が独自に名付けた愛称やキャッチコピーもある。

各局が独自に名付けた愛称やキャッチコピー
放送局名放送系列愛称・キャッチコピー
秋田放送JRN・NRNABSFM[90.1](キューマルイチ)[38]
東北放送FM935(クミコ)[39]
茨城放送[注釈 17]NRNLuckyFM(ラッキーエフエム)[40][注釈 18][注釈 17]
文化放送二刀流ラジオ。[43][注釈 19]
ニッポン放送HappyFM93(ハッピーエフエムきゅうじゅうさん)[44][注釈 20]
新潟放送JRN・NRNつながるFM、ひろがるBSN[45]
北日本放送KNBラジオ+FM90.2[46]
北陸放送はじめましてFM94.0、AM1107これからも[47]
東海ラジオNRNくっつく!!FM92.9[48]
CBCラジオJRNI AM FM, CBC RADIO.[49]
ラジオ大阪NRNFMクイック(91.9MHz)[50]
MBSラジオJRN・NRNMBSラジオはFA宣言!![51][注釈 21]
和歌山放送wbsFM 94.2(ダブリュー・ビー・エス エフエム きゅー・よん・に)[52]
中国放送RCC-FM[53]
山口放送エフエムKRY[54]
南海放送Fnam(エフナン)[55]

沿革

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2013年

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  • 7月17日 - 総務省は「放送ネットワークの強靭化に関する検討会」中間取りまとめを公表[9][10]。
  • 9月27日 - 総務省は「V-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針」を公表[11][12]。

2014年

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  • 1月31日 - 総務省は「AMラジオ放送を補完するFM中継局に関する制度整備の基本的方針」を公表[13][14]。
  • 3月12日 - 総務省は放送法施行規則等の一部を改正する省令案等について電波監理審議会に諮問し、原案を適当とする旨の答申を受ける[56][57][58][59][60][61][62]。
  • 4月1日
    • 放送法施行規則に、補完中継局の安全・信頼性基準は超短波放送局用のものを適用するとされた[63]。
    • 基幹放送用周波数使用計画に「補完中継局」が定義された[1]。
  • 5月19日 - 電波法施行規則に、主たる親局の補完中継局の免許申請については告示により公示された期間内にするものとされた[64]。
  • 6月30日 - 基幹放送用周波数使用計画に、主たる親局の補完中継局の周波数が規定され、同時に「平成32年(2020年)3月31日」までに使用されない場合は削除するものともされた[8]。
  • 7月16日 - 九州総合通信局は南日本放送に予備免許を交付[65]。
  • 8月19日 - 北陸総合通信局は北日本放送に予備免許を交付[66]。
  • 8月24日 - 南海放送がV-Low帯FM実験試験局の運用を開始[67]。
  • 9月3日 - 関東総合通信局はTBSラジオ&コミュニケーションズ(現:TBSラジオ)、文化放送、ニッポン放送に予備免許を交付[68]。
  • 10月31日 - 四国総合通信局は南海放送に松山(伊予)局の予備免許を交付[69]。
  • 11月5日 - 中国総合通信局はNHK松江放送局に隠岐局(ラジオ第1通常中継局)の予備免許を交付[70]。
  • 11月26日
    • 北陸総合通信局は北日本放送に免許を交付[71]。
    • 四国総合通信局は南海放送に松山(伊予)局の免許を交付[72]。
  • 12月1日 - 北日本放送と南海放送(松山(伊予)局)が本放送を開始。全国で最も早い本放送の開始となった[3][73]。
  • 12月5日 - 東北総合通信局は秋田放送に予備免許を交付[74]。
  • 12月22日
    • 九州総合通信局は南日本放送に免許を交付[75]。
    • NHK松江第1放送の隠岐局が本放送を開始