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  • 文庫 「自然」という幻想: 多自然ガーデニングによる新しい自然保護 (草思社文庫 マ 6-1)

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文庫 「自然」という幻想: 多自然ガーデニングによる新しい自然保護 (草思社文庫 マ 6-1)

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自然を「元来の姿」に戻そうとしてきた自然保護活動。
外来種を徹底的に駆除、手つかずの自然から人間を遠ざけ、人工物を撤去……。
しかし、それで本当に、地球の自然が守れるのか?
著者は「手つかずの自然こそ至高、自然を元の姿に戻すべき」というこの価値観が、
じつはアメリカでつくり出された「カルト」であり、科学的にも、費用対効果からも、
実現不可能な幻想であると、世界各地の実例から示していく。
自然を「かくあるべし」と限定してきた過去の自然保護のあり方を批判し、
自然をもっと多面的なものととらえ直して、多様な現実的目標設定の下で
自然を創り出す「多自然ガーデニング」を提案する。

<目次より>
第1章 自然を「もとの姿に戻す」ことは可能か
第2章 「手つかずの自然」を崇拝する文化の来歴
第3章「原始の森」という幻想
第4章 再野生化で自然を増やせ
第5章 温暖化による生物の移動を手伝う
第6章 外来種を好きになる
第7章 外来種の交じった生態系の利点
第8章 生態系の回復か、設計か?
第9章 どこでだって自然保護はできる
第 10 章 自然保護はこれから何をめざせばいいか

「昔に戻す」以外の自然保護の目標を議論する
多様な目標を土地ごとに設定しコストも考慮しよう
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商品の説明

著者について

エマ・マリス(Emma Marris)
サイエンスライター。自然、人々、食べ物、言語、書籍、映画などについて執筆。数年間記者として勤務していたネイチャー誌のほか、ナショナルジオグラフィック、ニューヨークタイムス、ワイヤード、グリスト、スレート、オンアースなどの雑誌・新聞に寄稿している。ワシントン州シアトル出身、オレゴン州クラマスフォールズ在住。

岸 由二(きし・ゆうじ)
慶應義塾大学名誉教授。生態学専攻。NPO法人代表として、鶴見川流域や神奈川県三浦市小網代の谷で〈流域思考〉の都市再生・環境保全を推進。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)、『利己的遺伝子の小革命』(八坂書房)、『「奇跡の自然」の守りかた』(ちくまプリマー新書)、『「流域地図」の作り方」(ちくまプリマー新書)』など。訳書にドーキンス『利己的な遺伝子』(共訳、紀伊國屋書店)、ソベル『足もとの自然から始めよう』(日経BP)、スヒルトハウゼン『都市で進化する生物たち』(小宮繁と共訳、草思社)など。 鶴見川流域水委員会委員。

小宮 繁(こみや・しげる)
翻訳家。慶應義塾大学文学研究科博士課程単位取得退学(英米文学専攻)。専門は20世紀イギリス文学。2012年3月より、慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、雑木林再生・水循環回復に取り組む非営利団体、日吉丸の会の代表をつとめている。訳書にステージャ『10万年の未来地球史』(岸由二監修、日経BP)。スヒルトハウゼン『都市で進化する生物たち』(岸由二と共訳、草思社)。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 草思社
  • 発売日 ‏ : ‎ 2021/4/5
  • 版 ‏ : ‎ 単行本
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 本の長さ ‏ : ‎ 368ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4794225156
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4794225153
  • 商品の重量 ‏ : ‎ 1 g
  • 寸法 ‏ : ‎ 10.6 x 1.9 x 15.2 cm
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  • カスタマーレビュー:
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星5つ中4つ
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日本からのトップレビュー

  • 星5つ中5つ
    「過去に戻す」のではない「未来をつくる」自然
    2018年7月29日に日本でレビュー済み
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    去年の夏、岡山県の西粟倉村に息子を連れて行った。「100年の森構想」をかかげるこの地で、家具作りをする大島さんは、山をずーっと見回し「人が植えた部分はどの程度だと思いますか」と聞いた。

    見渡す限りの山々。そこにあるほとんどの木は、人が植えたものだ。そして、「里山」というのは人の手がきちんと入った自然を言う。この村では、きちんと間伐をした結果、生物も多様になって、例えば、川に戻ってきたヒメボタルは幻想的だった。

    自然ってなんだろうか?

    サイエンスライターのエマ・マリスが時間をかけ、地球中を歩いて「(未来の)自然とは何か」を提案するこの本は、改めて次のことに気づかせてくれる。

    ・いわゆる「手つかずの自然」はほとんどない。手つかずの聖地、東欧のビアロウィエージャ原生林も、長い人との交流の跡がある。「母なる公園」と呼ばれるイエローストーンは厳格に管理されている。

    ・実際、凍っていない地表の半分は農林業が営まれている。(ランドスケープの名著『パタン・ランゲージ』で「田園」が重視されているのも納得)

    ・外来種が必ず生態系を崩壊させ、多様性を低下させるとは限らない。逆に多様性が向上する例もあり、自然保護に外来種を活用することも始まっている。(テレビ番組の「池の水ぜんぶ抜く」は「外来種=悪」としているけれど)

    つまり、この本は、訳者の岸由二教授があとがきの冒頭に書いている通り、

    ”人の暮らしから隔絶された「手つかず」の自然、人の撹乱を受けなかったはずの過去の自然、「外来種」を徹底的に排除した自然生態系、そんな自然にこそ価値ありとし、その回復を自明の指針としてきた伝統的な理解に、改定をせまる”

    のだ。

    マリスが提案するのは、人と離れたところにあるのが自然ではなく、自然は人と共にある、と再定義すること。そして「昔に戻す」以外の目標として、新たな目標を掲げている。その目標は、生物多様性だけでなく、自然の経済的な意味や、精神的な価値までかなり多様だけれど、自然は変化していくもの、未来に向けて何をするかという点が明確だ。

    そして、そう自然を再定義すると、町の一角や都市の河川、農地や林地など、人々の暮らしの背景にある自然が、地球に広がっていく自然なのだという大転換が起こる。そして、TEDトークでマリスが強調していたのは、子供たちをそういう自然に触れさせること。なぜなら「触っていないものは、愛せない」から。

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    自然とは何か、それを保護するとはどういうことかについて、いろいろ考えさせてくれる一冊。
    2021年1月6日に日本でレビュー済み
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    エマ・マリス氏は、米国・シアトル出身のサイエンスライター。ネイチャー誌、ナショナルジオグラフィック誌、ニューヨークタイムス紙などに、自然、人々、食べ物、言語、書籍、映画などをテーマに執筆している。

    本書は、2011年に発表された『Rambunctious Garden : Saving Nature in a Post-Wild World(ごちゃまぜの庭:野生後の世界で自然を保護する)』の全訳で、2018年に出版された。

    私は、自然保護について何ら専門的な知識を持ち合わせてはいないが、訳者の岸由二氏(慶応大学名誉教授)によると、ここ10年ほど、世界の自然保護の分野は、大論争と新しい希望の時代に入ったという。それは、人の暮らしから隔絶された「手つかず」の自然、人の攪乱を受けなかったはずの過去の自然、「外来種」を徹底的に排除した自然生態系、そんな自然にこそ価値ありとし、その回復を自明の指針としてきた伝統的な理解に、改定をせまる多様な議論・実勢が登場しているということであり、著者は本書で、そうしたパラダイムの変化(の兆候)を具体的な事例を挙げて紹介している。

    読了して、このテーマの議論の前提として再認識したことが2点ある。

    ひとつは、自然保護家が声高に叫ぶ「手つかずの野生(Wilderness)」というものは、地球上に(氷結地帯などは除き)ほとんど存在しないということである。例えば、米国の自然保護家の多くは、ヨーロッパ人が移住を始める以前の北米大陸を「手つかずの自然」と位置付けるが、現実には、ベーリング海峡を渡って先史時代以来住んでいた先住民が、既にそれ以前に自然を攪乱させており、「手つかずの自然」ではなかったのである。

    もうひとつは、人為的なものがなくても、自然は常に変化するということである。従来は、自然(生態系)は不変である、あるいは、わずかな揺らぎはあるものの、基本的には安定した平衡状態にあるとする「自然の均衡」説が主流であったが、実際には、自然は非平衡状態にあり、常に変化するものであることが明らかになってきたのだ。

    この2つを考えれば、仮に過去の自然状態を回復することが可能だとしても、そもそも、その基準となる時点を合理的に定めることができないことは明らかである。

    そして著者は、「手つかずの自然」こそ理想という考え方を捨てて、「ごちゃまぜの庭(多自然ガーデン)」というコンセプトを提唱するのである。それは、①人間以外の生物の権利を守ろう、②カリスマ的な大型生物を守ろう、③絶滅率を下げよう、④遺伝的な多様性を守ろう、➄生物多様性を定義し、守ろう、⑥生態系サービスを最大化しよう、➆精神的、審美的な自然体験を守ろう、という7つの具体的な目標を掲げ、実現するためのコストを考慮した上で、それぞれの地域に関わる人びとが、自らの地域に適した目標を合意・設定して、自然を保護し、自然の価値を高めていこうというものである。

    自然とは何か、それを保護するとはどういうことかについて、いろいろ考えさせてくれる一冊である。

    (2021年1月了)

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  • 星5つ中5つ
    自然観のパラダイムシフト
    2019年5月30日に日本でレビュー済み
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    「古き良き昔に戻す」事を目指してきた、自然保護、環境保全の思想の歴史をたどり、「古い生態系は安定しているので望ましいとする自然観の幻想」をあらわにしてみせる。現状を俯瞰し、手つかずの自然崇拝を冷静に批判する。著者は「ウィルダネス崇拝(カルト)」という強烈な言葉でそれを表現する。

    アメリカ流の自然観(自然保護思想)が元になっているので、日本人の一般的・素朴な自然観からすると、少し違和感を感じる部分もあるが、現在の日本を席巻している環境保全思想の趨勢には良く当てはまる。

    批判だけでなく、具体的に新しい自然保護・環境保全の戦略的目標・方法を、各地での取り組みを紹介しながら提案している。自然との今後のつきあい方を考えるには、とても良い本だと思う。

    原題は[RAMBUNCTIOUS GARDEN ~ SAVING NATURE IN A POST-WILD WORLD]

    普通、はずすことの多い邦題だが、原題より邦題の方が著者の執筆意図をよく表している。

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  • 星5つ中3つ
    TOC
    2025年8月31日に日本でレビュー済み
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    ◎第1章 自然を「もとの姿に戻す」ことは可能か

    自然は「遠きにありて思うもの」ではないはずだ

    自然を「過去の状態に戻す」ことの矛盾

    世界の絶滅首都=ハワイで移入種を除去したら……

    ハワイでも問題となる「基準となる過去の自然」

    過去を取り戻すための、オーストラリアでの驚くべき苦闘

    古い「教義」から自由になりはじめた生態学者たち

    ◎第2章 「手つかずの自然」を崇拝する文化の来歴

    イエローストーンが「母なる公園」と呼ばれる理由

    ウィルダネスの征服の時代―――1860年代まで

    自然保護運動家ミューアの時代――1860年代以降

    「ウィルダネス崇拝」のはじまり――1890年代以降

    「ウィルダネス崇拝」の先鋭化と強大な影響力

    人間を排除すれば、自然は安定するのか

    生態学の理論は現実に合わなかった

    自然の変化の激しさは生物も対応できないほど

    変化するイエローストーンをどう管理するか

    ◎第3章 「原始の森」という幻想

    ウィルダネスの聖地・ビアロウィエージャ

    実はビアロウィエージャは「手つかず」ではない

    ビアロウィエージャには現在も人の手が入り続けている

    先住民族が多くの大型動物を絶滅に追い込んだ

    先住民族はその後も環境に影響を与え続けた

    生態学や自然保護運動はなぜ人間を排除したのか

    環境活動家はウィルダネスをどう考えているか

    ビアロウィエージャの自然はさらに改善できる?

    ◎第4章 再野生化で自然を増やせ

    オランダの干拓地で太古の草原を再現する

    「更新世再野生化」とは何か

    北米の更新世再野生化計画に対する賛否両論

    アメリカに大型動物を導入するのは本当に問題か

    過去を志向しながら新しい生態系を創出する

    再野生化で太古のヨーロッパの姿を明らかにする

    「人工的な野生」で自然を増やす

    ◎第5章 温暖化による生物の移動を手伝う

    温暖化に適応する生物の移動は間に合うか

    動植物は実際に極方向や高地へ移動している

    生物の移動に手を貸すことを躊躇する研究者たち

    タブーに挑み、立ち上った市民ナチュラリスト

    人による移転という考えを生態学者が認めはじめた

    「管理移転」は既成事実化しつつあり止められない

    管理移転の指針作りのための実験は意外に困難

    ここでも「手つかずの自然はない」ことが問題に

    温暖化に対応した最適の植林パターンを探す実験

    林業関係者が戦慄した気候予測地図

    営利活動による管理移転計画への賛否両論

    ◎第6章 外来種を好きになる

    外来種は必ず生態系を崩壊させるか

    外来種とそれに対する人間の対応の歴史

    外来種駆除の現場では何が行われているか

    外来種は生態系の不安定化・多様性低下の原因か

    従来の「侵入生物学」に異を唱える生態学者

    外来種と交雑する「遺伝子汚染」をどう考えるか

    画一的な外来種駆除が無意味なら、何をすべきか

    外来種を利用しはじめた自然保護論者たち

    ◎第7章 外来種の交じった生態系の利点

    外来種でできた生態系を持つ島

    外来種が在来種より優れている場合がある

    「新しい」生態系は生産性も多様性も高く健全かもしれない

    はびこる外来種も時間とともに沈静化する

    「新しい」生態系がおおう面積は地球の何割か

    有用な「新しい」生態系の外来種を除去すべきか

    「新しい」生態系の変化を研究するべきだ

    ◎第8章 生態系の回復か、設計か?

    「川」は人工物であるという発見

    生態系を回復するのでなく目的に合わせ設計する

    生態系を「設計」する必要があるのはどんなときか

    デザイナー生態系とウィルダネスと多自然ガーデン

    ◎第9章 どこでだって自然保護はできる

    重金属に汚染された川の改善の未来像

    あらゆる方法で自然を増やし改善すべきだ

    自然回廊で保全地域同士をつなぎ合わせる

    減税措置などで農業者も保全活動に巻き込む

    農業と自然保護の最適解を求める試み

    工業地域や高速道路にも自然は増やせる

    狭い庭やバルコニーの小さな自然も有意義

    散水も肥料も少なくてすむ野生の庭・在来種の庭

    造園家が温暖化適応策にかんする情報提供者に

    近くの自然を発見し、近くに自然を受け入れる

    ◎第10章 自然保護はこれから何を目指せばいいか

    「昔に戻す」以外の自然保護の目標を議論する

    目標1――人間以外の生物の権利を守ろう

    目標2――カリスマ的な大型生物を守ろう

    目標3――絶滅率を下げよう

    目標4――遺伝的な多様性を守ろう

    目標5――生物多様性を定義し、守ろう

    目標6――生態系サービスを最大化しよう

    目標7――精神的、審美的な自然体験を守ろう

    多様な目標を土地ごとに設定しコストも考慮しよう

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  • 星5つ中4つ
    原住民の時代から「自然」は変えられた!?
    2018年8月11日に日本でレビュー済み
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    欧州人が立ち入る前の大地には原住民によって絶滅した生物がいたとか、人間が立ち入らなくても自然はどんどん変化するなど、「自然」への見方が変わりそうな目からウロコの話の数々。ただ、原作者の文章表現が難解で骨を折りました。それを補足するように、あとがきで岸教授が分かりやすく総括されているので、先にあとがきを読んでおくといいかもしれません。

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  • 星5つ中5つ
    海外での論争の状況がわかりました
    2018年10月30日に日本でレビュー済み
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     待望の翻訳書です。自然保護をめぐる国際的な論議の焦点を明快に紹介してくれる本だ

    からです。焦点の一つは外来種問題。日本国内では、<外来種は悪>とする単純な見解

    が、役所、学校、学会、報道、自然保護団体をとおして広く支持されているようですが

    、欧米の自然保護の前線では様相が違うようです。開発や温暖化の進行にともない、生

    態系の不可逆的な変化がますます顕著な時代にあって、外来種の完全排除を掲げ、過去

    の復元に固執する自然保護の方式は、もはや現実への対応能力を喪失している(幻想!

    )とする専門家たちの主張が大きな権威をもっているようです。<ため池>外来種騒動

    などで乱暴な論議ばかりが広がる日本の自然保護の現状をみれば、旧来の理論(幻想!

    )に拘泥せず、自然の現状から多様な目標をたて<多自然ガーデン>世界を創出してゆ

    こうという新しい自然保護を紹介する本書の登場はまことに有益。ドーキンスの「利己

    的遺伝子」の訳者でもあり、自然保護の実践家でもある訳者の解説も、旗幟鮮明。日本

    の自然保護の未来を開く本になってゆくことでしょう。

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  • 星5つ中5つ
    生態系サービスの推進者たちの真意はどこに?
    2019年1月2日に日本でレビュー済み
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     訳者あとがきでテレビ東京『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』を明確に否定する「岸由二(訳)」の本書は、2016年に大きな注目を浴びた「岸由二(解説)」の『外来種は本当に悪者か?』の続編と言ってよい。とは言え、新聞各紙に軒並み書評が掲載され、読売新聞で好意的な書評を書いた出口治明氏に対しては「お前は専門家じゃないから発言するな」と言わんばかりの反応までネット上で出て出口氏困惑といったヒートアップした2016年に比べると、本書に関してはいたって平静だ。

     外来種問題の行き着くところは、本書が主題とするような自然保護のあり方であって、それ無くしては、何を目指すのか、何をもって解決とするのか、何をすべきか(すべきでないのか)をいくら考えても意味のある結論にはならないと思われる。しかし、外来の生物種を排除すれば問題が解決するかのような単純なロジックゆえなのか、人々が持つ潜在的な排外意識の表れなのか、外来種を主題にすると多くの注目を集めるのに対して、「自然保護とは」「ウィルダネスだろぉ」「イエローストーン」というのは全く響かない現状がある。

     TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』が2018年8月27日放送分で「今こそ考えよう、外来種との向き合い方」をテーマにし、岸由二氏と五箇公一氏をそれぞれ電話出演させたが、それを除いては2019年を迎えても目ぼしい反応は見当たらない。

     外来種を利用して便益を得たいという立場の人たちが自然保護自体にあまり興味が無いというのはわかるのだが、自然保護サイドの人はどこに行ってしまったのか。

     思い出してみれば、『外来種は本当に悪者か?』のときに反論として目立ったのが、「外来種は生態系サービスを損なう」「外来種によって遺伝資源を失う」という類のもので、それを理由に「間違っている」「誤っている」と強い拒否反応を示すものだった。

     多数の著書がある日本の動物行動学者も、2016年に自身のブログで、『外来種は本当に悪者か?』が「本質的なところで間違っている」として、「「人ができるだけ健やかに生存できる状態や、それを維持する」ことを目指している」「これは環境問題を考えるうえでとても大切なことだ」「この”目指している”ことを聞いて違和感を覚える人も、特に生物好きの人のなかにはおられるかもしれない」「でもここから目をそらしてはいけない」というように論じて、人への実利的な面から批判をしていた。

     しかし、生物多様性をめぐるこのあたりの議論は、生物学者(動物生理学)の本川達雄氏が『生物多様性』(中公新書)の終章「生物多様性減少にどう向き合えば良いのか」で色々と検討しているけれども、「全地球で必要とする栄養の95パーセントはたった30種の作物から得られている」「今の栽培品種を作り続けるだけでもう十分」「1000万種が500万種に減っても、安定性にそれほどの違いは出てこない」ということに行きついて、説得力を失ってしまうのが実際のところだ。

     また、本書が第7章「外来種の交じった生態系の利点」で示すように、外来種を含む生態系から得られるサービスの方が、外来種を含まない場合よりも優れていることだって、大いにあり得る。単に人への利益を増大させればよいというのであれば、好影響を得られる外来種を選別して導入できる手法を開発しようということにも繋がってくる。

     けれども、生態系サービスを声高に唱える人たちは、好影響を与える外来種を積極的に導入しようなんて、微塵も思っていなさそうだ。

     この点について本書は、(生態系サービスの推進者たちは生物多様性に内在的価値を認めているが)「関係者たちがこの価値感情を共有しない状況の下で、生物多様性の保全を誘導する方策として、生態系サービスを取り上げているのだ」(292ページ)と一刀両断にしてしまう。真意は別のところにあるのに方便として生態系サービスを唱えることが広まっているのだとすると、目先は良いとしても、いずれまともに相手にされなくなってしまわないだろうか。

     もっとも、外来種がいても生態系サービスは得られる、それどころか優れていることだってあるのだから外来種を許容しようというような話だとすると、19~20世紀に人にとって有害な種以外はどんどん入れて試してみようとばかりに意図的導入をやっていた時代への逆戻りにも聞こえてしまう。代償措置があるからと言って安易に開発行為が繰り返されてきたのも否定できないだろう。自然保護サイド(であるが表向きは生態系サービスを唱えるサイド?)らしき人たちが警戒感を隠さないのも、理解できるところがある。

     けれども、本書は、第10章「自然保護はこれから何をめざせばいいか」で明らかなように、逆戻りをしようという主張ではない。自然保護の立場から何をすべきかを模索するもので、『外来種は本当に悪者か?』よりも広い視野で考えていくことができる良書と言える。

     残念なのは、一般受けしないのは仕方ないとしても、自然保護界隈でも反応が乏しいことだ。岸由二氏は、この国内状況を変えたいのだろう。その日はいつになるだろうか。

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  • 星5つ中4つ
    「本来の自然」という幻想からの脱却を
    2024年11月2日に日本でレビュー済み
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    本書の前半では、この地球上には「ウィルダネス」などない。「もはや」ではなく、そのような概念自体が幻想であることを説き、けれど人間の外部圧による種の絶滅や自然災害の発生を食い止めて「地球の状態をもっと良いものにする」方法をのヒントを書いています。

    「ウィルダネス」のとらえ方は地域により異なります。

    アメリカのように歴史的に広大な無人地帯を持つ国の生態学者は、自然界の変化の要因として人間(人間由来の気候変動を含む)と人間以外の動植物の遷移に分けて考える傾向があるが、イギリスのような狭い島国の生態学者は環境の遷移を考えるときに人間を自然界への外部圧として排除することはしない、人間の社会的、文化的な変遷を環境変化と一体で考えるということです。

    このくだりは、私の遠い記憶を呼び覚ましました。

    若かりし頃、東南アジアを旅した時に列車の窓から緑に満ちた風景を見て、相席となったアメリカ人は「どこを見ても畑や果樹園、田として利用されていて、この国には自然が一つもない」という感想を述べていたことに意表を突かれたことを思い出したのです。

    日本人である自分にとっては田畑はちょっと微妙ですが、整備された山林などは「自然」の範疇だったのですから。

    閉話休題。

    著者はなぜ「ウィルダネス」を幻想だというのか。

    ある地域に直接人間が手を加えなくても、例えば離れた地域で人間がある種の動物を乱獲したり、保護したりすることにより生態系のバランスに変化が生じ、その変化ははるか離れた地域まで様々な形で伝播してゆくからです。

    そもそも自然界というのは絶え間ない変化を続けており、その変化に対して人間が外部圧として影響した部分を切り離し、人間が関与する前の状態に戻そうという「保護」に何ほどの意味や意義があるのかと、穏やかに異議をとなえています。

    そもそも基準点をどこに定めればよいのか?

    「元に戻す」という幻想を捨てて、現在生じている問題、絶滅の危険に瀕している動植物に対して何ができるかを考えることが地球の状態をもっと良いものにすることができると。

    それらの動植物が人類の知る限り本来は生息しなかった地域へ移植をすることであっても、移植された動植物がその地で従来よりも多様性が増加した「新しい」生態系を構築する可能性があるからです。

    「外来種」は移植された地の生態系を破壊して単純化してしまうリスクを持つと同時に、気候変動や人間の社会的/文化的な活動により著しくその数を減じてしまった在来種に代わって、その地で新たな生態系を構築する可能性も秘めていると著者は力説します。

    それは何も広大な原野に限られた挑戦ではなく、都市のバルコニーからでも始めることが出来ることであると。

    なんでも良いからその地で育つものを何かを植えて、生物がその環境に依って生存し、多様性を高めること促しています。

    ステレオタイプのキーワードに惑わされていたずらに過去に固執するのではなく、目前の出来事に対してできること少しずつ、何でもやってみる。

    地球を管理するのは人類の義務であると終章に記されています。

    回復ではなく生態系デザインする多自然の庭師を目指すべきであると。

    幸運と正しい心がけをもって取り組めば、それは快適で楽しい仕事であると。

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